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黄昏異変 肉欲の奈落
第1章 女医 早苗
「乾さんだけにはお知らせしたかったんですが、母が亡くなったので、連絡のしようもなくて・・・・」
「そうでしたか。せめてお線香の一本も」
浩二は散歩の途中、早苗の案内で、焼香に坂根家を訪ねた。
はじめて訪ねた坂根家は浩二の家と意外に近く、路地の突き当たりの木立に囲まれた洒落た二階家だった。
線香を上げて振り返ると、早苗はいかにも寂しそうだ。
医師でありながら、母の異変にまったく気づかなかったことが悔やまれると涙を流した。
その姿は痛々しく、慰める言葉も見つからない。
浩二は早々に坂根家を退散した。
(明日はわが身か・・・・)
浩二は人生の黄昏をしみじみと感じた。
翌日から幸子に代わって早苗との散歩が始まった。
ひと月ほどすると、早苗が少しかしこまった声で話し出した。
「乾さん、お願いがあるんですけど」
「なにか」
「じつは、母の遺骨を海葬にしたいんです」
「かいそう・・・」
「ええ。海に。母の遺言で」
「そういえば、いつか、お母さんがそんなこと言ってたなあ」
「それで、もしよろしかったら、ご一緒していただけないかと」
「ああ、いいですよ。海葬にはご親戚の方も・・」
「いえ来ません。わたくし一人です」
「そりゃあ、寂しいねえ。喜んでって言うのも変だけど、幸子さんとの最後のお別れにご一緒しますよ」
「よろしくお願いいたします」
早苗は海葬の予定を書いた案内を浩二に渡し、深々と一礼した。
11月18日(日)13時 平塚新港
「そうでしたか。せめてお線香の一本も」
浩二は散歩の途中、早苗の案内で、焼香に坂根家を訪ねた。
はじめて訪ねた坂根家は浩二の家と意外に近く、路地の突き当たりの木立に囲まれた洒落た二階家だった。
線香を上げて振り返ると、早苗はいかにも寂しそうだ。
医師でありながら、母の異変にまったく気づかなかったことが悔やまれると涙を流した。
その姿は痛々しく、慰める言葉も見つからない。
浩二は早々に坂根家を退散した。
(明日はわが身か・・・・)
浩二は人生の黄昏をしみじみと感じた。
翌日から幸子に代わって早苗との散歩が始まった。
ひと月ほどすると、早苗が少しかしこまった声で話し出した。
「乾さん、お願いがあるんですけど」
「なにか」
「じつは、母の遺骨を海葬にしたいんです」
「かいそう・・・」
「ええ。海に。母の遺言で」
「そういえば、いつか、お母さんがそんなこと言ってたなあ」
「それで、もしよろしかったら、ご一緒していただけないかと」
「ああ、いいですよ。海葬にはご親戚の方も・・」
「いえ来ません。わたくし一人です」
「そりゃあ、寂しいねえ。喜んでって言うのも変だけど、幸子さんとの最後のお別れにご一緒しますよ」
「よろしくお願いいたします」
早苗は海葬の予定を書いた案内を浩二に渡し、深々と一礼した。
11月18日(日)13時 平塚新港