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第2章 取締役経理部長 　ユカリ

　「雨宮です」

　「は、はじめまして。乾です」

　「こちらこそ。私も初めてでよく分かりませんから、二人で頑張りましょう。ウフフ」

　「な、何か、可笑しいですか」

　「だって、乾さん、鳩が豆鉄砲でも喰らったような目でわたしの顔を見て驚くんですもの」

　「ああ、失礼。じつは、あなたが知り合いの女性にあまりにもそっくりで・・・。他人の空似といいますが。いや驚きました」

　「それで、そんなに目を丸くして・・フフフ」

　雨宮はまた笑った。
　笑い声といい、声の感じといい、それによく見れば顔つきも、たしかに早苗とは少し違う。

　「髪を亜麻色に染めていなかったら、知りあいの名前を呼ぶところでしたよ」

　頭をかきながら浩二も照れくさそうに笑った。
　うつむきかけた雨宮が顔を上げて浩二をチラッと見た。
　早苗に比べ雨宮の方がおしとやかで、お嬢さんタイプ。
　そして何より、雨宮ユカリは早苗より少しスリムだ。
　先生がテーブルの隅においてあった『本日のメニュー』のレシピを指差した。

　「今日のメニューはチキンの照り焼きとピラフ、それにサラダです。雨宮さんがチキンとサラダ、乾さんはピラフをお願いします」

　慣れぬ手つきで料理をすると、雨宮が皿に盛りつけてくれた。

　「この料理、『ジョナサン』のメニューに似てますね」

　浩二がつぶやいた。

　「タンドリーチキンとメキシカンピラフでしょう。わたしもそう思いましたワ。お食べになりますの」と雨宮が聞いた。
　「はい、たまに。これでビール一杯」
　「あら、わたしも。お好きなんですか、お酒」
　「好きと言っても、缶ビール２、３本飲む程度ですけどね」

　すると、雨宮がニッコリ笑って浩二の方を向き、耳元で、小声でささやいた。