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黄昏異変 肉欲の奈落
第2章 取締役経理部長  ユカリ
 「改めまして、雨宮ユカリです。さっきお話に出たわたしのそっくりさんはどんな方かしら」
 「ああ、近所の知り合いのお嬢さんです。犬の散歩の友だち。犬友ですヨ」
 「その方とは、今もご一緒にお散歩を・・・」
 「それが、急な転勤で札幌に。札幌に行ってしまったと思っていたら、いきなり目の前に現れたので仰天したんです」
 「そんなに似てますの。女性で札幌に転勤するって、どんなお仕事を」
 「女医さんです。企業の勤務医だそうです」
 「お医者様・・・。乾さん、その方と何かありました」

 浩二はギクッとした。
 女の鋭い勘。

 「ど、ど、どうして・・・」

 「どうして分かったの」と言いそうになって浩二はあわてた。

 「・・・・どうして、そんなことを言うの」
 「やっぱり」

 雨宮の目が笑っていた。

 「やっぱり・・・。やだなあ、何もないですよ」
 「乾さん、もてるのね」

 浩二は照れ笑いをして、眼鏡を外すとお絞りで顔を拭った。
 二杯目のジョッキをググッと傾ける。

 「早苗さんのお母さんが突然亡くなって、それでまあ、父親代わりというか」

 「おかわり」

 今度は雨宮がジョッキを持った手を上げて追加を注文した。
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