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黄昏異変 肉欲の奈落
第2章 取締役経理部長  ユカリ
 浩二は二人を「瓜二つ」だと言った。
 もしかすると、似ているのは姿かたちより、アラサー女の焦燥感。それに、男を凌ぐ力を持った女の寂しさではないのか。
 上機嫌に酔った浩二がポロっと漏らした早苗の告白に、ユカリは自分と同じ心の寂寞を見る思いがした。
 ユカリの好奇心がどこかでざわついていた。
 その心に起こったざわつきが、ユカリにはどこか心地よく、甘酸っぱい味がしてならなかった。

 「光村建設取締役経理部長」の肩書き。
 それとは別に、ユカリには男に心を閉ざすもう一つの苦い体験があった。

 
 土曜日の午後、浩二はプールに出かけてみた。

 (もしかしたら、ユカリさんに会えるかも知れない)

 売店で支度を整えた浩二は、温泉にでも浸かる気分でプールに入った。
 50や100はと軽い気持で入ったが、25メートルプールを片道泳ぐと息が切れた。

 (二キロはとても無理だ)

 体力の衰えを痛感した。
 それでも休み休み五往復すると浩二はプールを出た。
 プールサイドに上がると、水から出た自分の体の重いこと・・・。
 必死の思いでよじ登ったが、そのままま立ち上がれない。
 四つん這いになったままプールサイドで呼吸を整えていると、目の前に人影が近づいて来た。
 すらりと伸びた足が目に入った。
 見上げるとスリムな水着姿の女性が立っていた。
 目の前に現れた足先から太腿までの白い肌に目がくらみそうだ。

 (まさか・・・)

 浩二がやっとこさ立ち上がると、そこにいたのは、そのまさかのユカリだった。
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