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黄昏異変 肉欲の奈落
第2章 取締役経理部長  ユカリ
 「お恥ずかしい。こんなはずじゃなかったのに。30年ぶりの水泳です」
 「30年ぶりであれだけ泳げたらたいしたものですよ」
 「見てたの・・・。しかし、ユカリさん、スタイルがいいですねえ。昨夜のコート姿とはまた一味違って。オッといけない。セクハラか」
 「セクハラだなんて。わたしうれしいワ、浩二さんに誉めていただいて」

 水着姿のユカリはえん然と微笑むと浩二を誘った。

 「一休みしたら、一緒に泳ぎませんか」
 「いや、僕に構わず、どうぞ泳いでください」

 言葉とは裏腹に浩二の顔が思わず崩れる。

 「浩二さん、何か運動していらっしゃるの」
 「毎日昼休みに会社の体育室で筋トレを二〇分ほどしていますけどね。ほかには全く」

 ユカリは、裸になった浩二の体に、歳に似合わない若さを感じた。
 その日、二人はもう一度泳いだ。浩二は五往復。ユカリは二〇往復。
 
 スポーツセンターを出た浩二はヘトヘトに疲れていた。
 その姿を見て、ユカリが浩二を自宅に誘った。

 「一休みしていきません」

 思いがけない誘い。

 「いいの、ユカリさん。たしかお一人でしたよね」

 ユカリが優しく微笑む。

 「じゃあ、お言葉に甘えようかなあ」

 浩二の足どりは嘘のように軽くなった。
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