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黄昏異変 肉欲の奈落
第2章 取締役経理部長  ユカリ
 (まさか、ユカリさんのベッドに寝るわけにも行かない)

 それに、万が一にも、寝室をのぞかれたら、完全にアウトだ。

 (念には念を入れよう)

 浩二はクローゼットを開くと、ぶら下がった衣類を左右にずらしてスペースを確保した。

 (よし、ここで座禅でも組むか)

 浩二はクローゼットを閉じ、真暗なクローゼットの中で足を組み、目をつむり、己の置かれた状況を省みた。

 (またも若い女性の寝室・・・)

 早苗のときのあの興奮とはいささか情況は違うが、なにはともあれ、若い女性の寝室に再び転がり込んだ・・・。
 こんなことが二度も続くとは、まさに奇跡だ。
 この奇跡の先に、ふたたび棚から牡丹餅が・・・。
 まさか。そんなことになったら奇跡のWパンチだ。
 浩二はおもわずほくそ笑んだ。

 ユカリは浩二のスニーカーを靴箱に隠すとドアを開けた。

 「ごめんなさいね。お休みのところ」

 綾乃は部屋に入ると湯気の上がっている食卓の椅子に腰を掛けた。

 「あら、ユカリさん、随分食材があるのね。あなた、そのスリムな体でこんなに沢山お肉を食べるの」
 「そうね、チョッと多すぎね、フフフ。泳いだあとはお腹がペコペコなの。お話ってなに」

 綾乃の話は、ユカリの結婚についてだった。
 ユカリの母・智子が会長の実兄、節夫の家に押しかけたという。
 『ユカリはもう三〇過ぎ。仕事ばかりさせて、デートする時間もない』
 妹のあまりの剣幕に、節夫は困りはてて息子の慶太に何とかしろと相談した。
 その結果、夫の慶太から妻の綾乃に話が伝えられたのだ。
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