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黄昏異変 肉欲の奈落
第2章 取締役経理部長  ユカリ
 「寝室も見せてもらおうかしら」
 「やめて!」
 「ユカリ、あなたがどんな男と付き合うか、それはあなたの自由よ。でも、親にも会わせられないような男とのお付き合いはやめなさい」
 「お言葉を返すようですけど、わたし、誰と付き合うか、お母さんの許しを得ようとは思っていませんから」
 「ということは、いるのね。男が」
 「男・・・・。嫌な言い方。お母さんには関係ないこと」

 ユカリはそっぽを向いた。

 「あなた、あの時のことをまだ根に持っているの」
 「そうね。孫が欲しいなら、あの時・・・。後悔してるんでしょう」
 「馬鹿なことをいわないで。ユカリが結婚して孫が出来たら、もちろんうれしいけど」
 「ウソばっかり。わたしの結婚より、孫が大事なんでしょう」
 「それは誤解よ」
 「聞いてるわ。伯父さんのところに怒鳴り込んだそうね」
 「あれは、あなたの体を心配してよ」
 「同窓会でさんざん寂しい思いをしたからでしょう」

 しばらく水掛論争をすると、娘との間に刺々しい雰囲気だけを残して母は帰っていった。

 翌週、その日もカミさんは旅行で留守だ。
 いつものように、浩二はいったん帰宅し、リリーの散歩を済ませるとプールに向かった。

 ここ数日、浩二は幻想に悩んでいた。
 あの日触れたユカリの乳房の幻想だ。

 シャワーを浴び、プールサイドに出ると、先に来ていたユカリが浩二の前で頭を下げた。

 「先日はとんだ邪魔が入って、ごめんなさい」

 やけに胸の膨らみが気になって、水着姿のユカリがなんだか怖いようだ。

 「その後どうなったの」

 浩二は小声で聞いた。

 「どうもならないわ。それに、あんなこと、本当に例外中の例外。もう二度とありませんから」
 「いいですよ。ユカリさん、二度とあろうがなかろうが、あなたの家に行くことはもう二度とありませんから」
 「そんなこと言わないで。今夜、あの続を・・・」

 ユカリがささやくように言うと、浩二はゴクンと生唾を飲み込んだが、ユカリの言葉の語尾は聞こえなかった振りをしてとぼけた。

 「別に、飲むんだったら、居酒屋はいくらでもあるし・・。あんな危険を冒してまで君の家に行く気にはなれないよ」
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