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-その後の世界-
第1章 3年後の世界
焼酎。
運ばれたグラスを持った先輩が、置かれたままのグラスにチンッと当てる。
それから剥き出しになった僕の腕に視線を移し
「今度あんな事したら、襲って食っちまうからな」
なんて冗談めいた事をこぼす。
「………いいですよ。別に」
魂の抜けたような声でそう返せば、先輩は溜め息をひとつつく。
「冗談なんかじゃねぇぞ……」
「………」
ぐっと焼酎を半分程飲んだ先輩は、ぼそりと呟き、少しだけ潤んだ瞳を僕に向ける。
「なぁ、伊江。……お前、腹ん中になに溜め込んでんだよ」
「………」
「別に言いたくなきゃあそれでいいけどよ。……このままじゃお前、そのうち壊れちまうぞ」
3年前──……
家に戻ると、家族はいなかった。
誰一人、行方不明。
学校も、辞めた。
行く意味もない。