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-その後の世界-
第1章 3年後の世界
……ズルい。
幼児化したカズは、あの施設での出来事を鮮明には覚えていないようだ。
覚えていないというか、遠い昔の記憶みたいに、薄ぼんやりとしている……なんて。
現実味をまるで感じていない。
何も知らない一般市民のように、復興しつつある現実の流れに、ただただ素直に順応しているだけだ。
「……これ、伊江が?」
デスクに乗った幾つかの紙。
そこに描かれているのは、おぐっちゃんに頼まれたゆりかご内部のイラスト。
……瞬間記憶能力があり画家を目指したほどの画力があるなら、内部資料の少ないゆりかご内部の様子を伝えられる、と。
おぐっちゃんは今や時の人。
元ジャーナリストであり、長年ゆりかご内部の天井裏に生息していたため、書いた本は次々と売れ、マスコミ、メディアと引っ張りだこである。
そんなおぐっちゃんが出した条件。
それは、ナツネと山引の存在自体と、ナツネが今もゆりかご地下室でクイーンに食われている事実を伏せる事。