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-その後の世界-
第1章 3年後の世界
×××
瞼に光が射す。
何て事はない日常。朝だ。
じゅうじゅうと何かを焼く音が、台所から聞こえてくる。
その音に乗って、匂いまで。
……こんな絶望の朝でも、腹は減るんだな。
何だかそれが無性に腹が立つ。
ナツネがくれた、世界平和。
その上に、いつまでも立つ事のできない僕。
「おはよ」
カズが顔を出し、僕に笑顔を見せる。
……ごめん、カズ。
そんな気分になれそうにない。
「ほら、遅刻するよ」
カズが部屋に入り、僕から布団を引っ剥がす。
「…………」
なに、この平和なやり取り。
学校に遅れるよ的な……軽いノリ。
言われなくても、起きるって。
カズを見ずに、重い体を持ち上げる。
まだ胃の辺りがムカムカして気持ち悪い。
「なぁ、伊江」
デスク前に立つカズが、僕の描いた紙を持ち上げる。