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第1章 とし子の悲劇

桂一郎さんは、武方さんにきつい目つきでにらんだ後に、公園をあとにしました。

武方さんは、何も言うことができないままぼうぜんとたたずんでいました。

その頃でありました。

アタシは、義母が入院している周桑病院に行っていまして、義母に会っていました。

義母さまは、一般の病室に移りましたが、毎日のようにさみしい表情をしていました。

義母さまは、アタシがお見舞いにくるたびにこう言っていました。

「としこさん…すまないね…いつもとしこさんばかりに迷惑をかけて…」
「義母さま、義母さまは働き疲れてお体が疲れているので…ゆっくりとお休みください…」
「ありがとう…としこさんは優しいね…桂一郎…どうして桂一郎には嫁が来ないのかしら…」
「義母さま、桂一郎さんの結婚のことは心配をしなくてもいいから義母さまはお体をゆっくりと休ませて…元気になることだけを考えましょうね。」
「そうね。」

アタシは、時間が来たので家に帰ろうとしていましたが、帰り際に義母さまはアタシにか細い声でこう言いました。

「としこさん…引き続き…桂一郎の散髪をお願いします…」

アタシはその後、病院を出まして自宅に帰ることにしました。