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純愛ハンター
第9章 裁き9、プリティベイベー
翌日の夕方。啓太はその日のスケジュールを全てこなすと、1人タクシーへ乗り込んだ。

「W大学付属病院まで」

運転手にそう告げると、タクシーは都市部のさらに中心部へ向けて走り出した。

『お嬢さまを拘束いたしました よろしく』

啓太はB議員からのメールを見返すと腹の底から「ふふふっ…」と漏らすと、約20年前の出来事を思い出した。

(あの時が最初だったな…隔離病棟で“不良品”を処分したのは…)

お嬢と真紀の母親である大手放送局会長の孫娘との結婚が決まった若き日の五島啓太には、別れ話が焦げ付いていたC花という女がいた。
啓太が他に交際していた女たちは破格の手切れ金を提示するなり即座に別れを快諾したが、C花は別れを承諾しないどころか啓太との事を洗いざらいマスコミにぶちまけると脅した。C花は啓太の子供を妊娠していた。
このままでは後援者の顔を潰し、仲人を買って出てくれた与党の大物議員の顔も潰す事になる。それは市議から少ない後ろ盾でのし上がってきた啓太にとって、自身の政治家生命が即座に絶たれてしまう事を意味していた。
絶望しかけていた啓太は、既に手切れ金を支払って別れていたD里という女を呼び出すと、

「どうしようっ…!俺、どうしよう…このままじゃ総理になる夢が無くなっちゃうよぉ~っ…!ううう…」

乱暴かつ一方的なセックスを数回行った後、膝に甘えてそう泣きじゃくった。
D里は泣きじゃくる啓太の頭を撫でながら、心配そうに言った。

「…そんなにその女がしつこいんなら、先輩議員さんたちに相談してみたら?良い対処法知ってたりして…?」
「お前はアホかっ!この程度のトラブルで相談なんかしてみろ…!使えない奴だって思われて見捨てられるだろうが!あぁ~っ!どうしよう…何で俺の周りはこんなバカばっかなんだぁ…何て俺は可愛そうなんだ…あうぅぅ…」

D里は少々考え込むと、小声でこう言った。

「私の知り合いにね、手を出したファンの子にしつこく迫られてた男性アイドルに頼まれて、そのファンの子を強制入院させて病死させた…って言ってる医者がいるの…」
「え…?入院…病死…?」

D里はハッとして見上げる啓太の、乱れた前髪を直しながら話を続けた。

「…その医者はW大学付属病院の精神科に勤めてて、以前から面倒を起こす入院患者を隔離病棟に監禁して病死扱いで死なせてたみたいなのね…」
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