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純愛ハンター
第10章 裁き10(最終回)、純愛という名のエンターテイメント
「…私を陥れた奴と組むなんて正直、気が変になりそうだったよ…でもアンタがちゃんと父親に復讐が果たせる事と…憎しみの連鎖を断ち切って前に歩けるように仕向ける事が私自身の最大の復讐…私の“運命”に対する復讐だったんだ…」

お嬢は下唇を噛み締めながら鼻水をすすり上げると、素肌の肩口で涙を拭った。

「玲子ぉっ…!アンタってとんだ…とんだ偽善者だよっ!ううぅ~っ…どこまで自分の感情を抱え込んで生きて来たんだよ…?どこまで…!」

そして玲子の頭をそっと撫でると、乱れたベリーショートの前髪を直した。

「…私の両親は大恋愛で結婚したんだ」
「え…?」

玲子はお嬢の手を力強く握ると、遠い目で窓の外の景色を見つめた。

「母は父と将来を誓い合いながら周囲に結婚を反対され、母は親に押し付けられた相手と婚約する事になった…母は入籍間近なのにも関わらず父と駆け落ちして、行き当たりばったりの小さな田舎町で暮らしはじめた…そして母と父はふたりの関係を不動のものにするために何度も愛し合った…でも…」
「でも…?」
「でも、そんな身勝手な幸せは長く続なかった…母の婚約者だった男が母と父の元に現れて、父は復讐に狂った元婚約者に惨殺されたんだ…」
「そんな…」
「そして母は目の前で父を殺した元婚約者に犯されて、因果な事に妊娠してしまった…」
「ま、まさか…!」
「そう、そのまさかだ…父を殺した男と母の間に生まれたのが…この私なんだ…」
「玲子…」
「母は親族から絶縁され、それまでの知人友人も不気味がって寄り付かなくなって完全に孤立した…孤立ってのは…孤独ってのは信じられないくらい人を蝕むんだ…お嬢…アンタにも分かるだろう?」
「………」

…玲子の母親は社会から孤立したが故に、自身が置かれている状況に対しての感情の行き場を完全に失ってしまったという。
自分の行動が元で陥った状況とはいえ、あまりに世知辛い社会や運命への鬱憤は自然と一人娘である玲子へ向かう事になった…。

「気持ちの行き場を失った母は、私に暴言と暴力と…性的虐待を与えた…だからお嬢の素性を知った時私は…私とお嬢と紙一重なんだと思ったんだ…」
「そ、そんなのっ…!」

玲子は母からの日々の凄惨な暴言と暴力と性的虐待に、この世でたった一人の肉親を失いたくない一心で耐えに耐え続けた…。
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