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純愛ハンター
第10章 裁き10(最終回)、純愛という名のエンターテイメント
まともに生活出来るだけのおカネを渡せば母は落ち着いてくれるかもしれない…
わずかな記憶の隅にある優しい母に戻ってくれるかもしれない…
というかすかな希望を抱いて。
すると玲子は、都市部へ向かう電車の乗換駅のホームである女性に声を掛けられた。

「ねぇっ!あなた…どこかの芸能事務所に所属してる子?」

その女性は30代半ばの小さな芸能事務所の社長であり、玲子の常人離れした容姿に惹かれてスカウト的に声をかけたのだ。

「いえ…そういうの…何もしてませんけど…」
「そう…あなた、芸能のお仕事とかって興味ある?」
「えっと…あの、それっておカネいっぱい稼げますか…?」
「…あなた、おカネ稼ぎたい子なの…?」
「あ、はい…ちょっと家が…貧乏で…」

玲子はその足で事務所へ連れられると、社長に自分が置かれている状況とすぐにカネが必要である事を訴えた。
すると社長は、玲子をアイドルダンスユニットに所属させて箔を付けさせ、すぐに小銭の稼げるケーブルテレビや地方ローカル番組のレポーターの仕事を紹介する事を約束し、玲子はその数日後にその芸能事務所に正式に所属する事となった。
そして、社長の温情で通例はあり得ない『契約金』を受け取ると、そのカネを母に渡した。
すると母は、

「ううっ…ゴメンねぇ…私がだらしないばっかりにアンタにこんな事まで心配させて…ありがとう…私、ちゃんと仕事探すからぁ…」

涙ながらにそう言って喜んだ。
こうして玲子は学校に通いながら地道に仕事を続ける事で、アイドルとしてはブレイクこそしなかったものの、自力で学費と生活費を賄いながら生活する事が出来たのだ。
そして大学への進学が決まった玲子がふと、入学金と授業料を支払うカネを貯めていた預金通帳を開くと…

(え………?ど、どういう事っ?無いっ!ちょっとしか残って無い…!)

貯金の8割ほどが何度にも分けて引き下ろされていたのだ…!
心底混乱した玲子が母を問いただすと、

「あはははっ!ゴメンね玲子ぉ…ほとんど使っちゃったの…テヘっ!」

母はそう言って汚れた舌をペロリと出し、顔をかしげてシミだらけのこめかみに人差し指を当てておどけた。
なんと母は………その貯金のほとんどをギャンブルやネットで知り合った若い男に貢いでしまったという。

(こっ…殺すっ…ブっ殺してやるっ…!)
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