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第4章 裁き4、暴力なきDV

(…ん…？潮風…？船の上…？)

…四ツ倉が目を覚ますと、そこは船の貨物室と思われる場所だった。
薄暗く埃臭い貨物室の窓から差し込むわずかな灯りから、中に浮き輪や救命胴衣や小型ボートが積んであるのがかろうじて見えた。

「お降り下さい」

貨物室に大柄な男たちが入って来ると四ツ倉は強引に立たされ、拘束バンドを外された。

「う…！痛っ…！うあっ…」

拘束が解かれた事で、四ツ倉は顔を強打した以外にも左腕が激痛とともに全く動かせない事と、呼吸をするたびに左の脇腹に激痛が走る事と、右足の膝が激痛とともに大きく腫れ上がっている事を自覚した。

「外へどうぞ」
「あっ…うぅっ！」

男たちに強く背中を押された四ツ倉はびっこを引きながら貨物室から出ると、乗っていた小型船が全長100mも無いような小島の港に付けられているのが見えた。その小島の中央部には巨大な廃墟のような建物が鎮座していた。

「さ、島へお降り下さい」

男たちに背中を押されたくない四ツ倉は、真夜中の黒い海へ落ちぬように片足でケンケンしながら小型船から港の岸壁へ渡された小さな板を渡って島へ降りた。

「あの、俺はいったい…」

四ツ倉がそう尋ねるなり、

「あグぅっ…！痛っ…クっ…あぁぁ…！」

大柄な男に右膝をしたたかに蹴られてその場に倒れてもんどり打った。
男たちは四ツ倉に次々と言った。

「この島は警察の手の及ばぬ治外法権ですので…目一杯遊んでお暮らし下さい…」
「せっかくガサ入れからお逃げになったんですから…ほとぼりが冷めるまでこの『龍宮城』で目一杯遊んでお暮らし下さい…」
「日本全国から“通常では遊ぶ事の出来ない美女”を揃えておりますので…そちらの『玄武門』からお入りになって目一杯遊んでお暮らし下さい…」

しかし自分の置かれた状況を探りたい四ツ倉は、

「治外法権…？美女？俺がやってるクローズドイベントみたいな…」

と質問を返すが、

「ウガァぁっ…！」

男たちに顔を蹴り上げられ…

「ガフぅッ…！」

倒れた所を上腕部を踏み付けられ…

「うグッ…ウゲぇぇぇ…」

みぞおちを蹴り上げられ…そのたびに、

「目一杯遊んでお暮らし下さい…」

と、判で押したように繰り返し返された。
すると『龍宮城』と呼ばれる巨大な廃墟の『玄武門』から、妖艶な黒のワンピースに身を包んだ渡辺が姿を表した。