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兄貴の彼女/彼の弟(MILK&honey 後日談)
第1章 兄貴の彼女

   *

「勇、いらっしゃい!…ありがとね、るりっ……ちゃんっ」

「光兄……」

 美人に連れられてリビングに足を踏み入れて、目を疑った。
 兄貴が台所で、何やら作っていたからだ。

「ごめんな、ちょっと手が離せなくって……とりあえず、座ってて!」

 どうやら、卵を割って容器に入れて、カチャカチャ混ぜているらしい。
 ……兄貴、卵なんて割れたっけ?
 家で手伝いを頼まれては台所を破壊して、そのうち料理系は買い物しか頼まれなくなった記憶しか無い。
 ……快挙だ。一人暮らしって、人を成長させんだな。

「るりちゃん、これ、俺の一番上の弟で、勇!勇、この人は、るりちゃん!同級生で仕事仲間の工藤巧の、妹さん!」

「初めまして、工藤るりです。大学一年生です」

 絵に描いた様な美人が、ぺこっと頭を下げた。
 さっきはぼーっとし過ぎて気付かなかったけど、すっげー美人だ。テレビとか出ててもおかしくねー位、今までの人生で見た中で、何番目かに入りそうな美人だ。

 兄貴は手を拭きながら、こっちに来た。カウンターで遮られてて分からなかったけど、エプロンをしている……けど、なんなんだ!?
 それ、美人と色違いのお揃いじゃねえの?!
 驚きに次ぐ驚きで絶句してたら、次の言葉で驚きに追い討ちを掛けられた。

「るりちゃんさー、訳あって今うちに下宿してんだー」

「……下宿っ?!」

「うん。今っぽく言うと、ルームシェア?……あれ、ちょっと違う?」

 俺が驚き過ぎてるのを見て落ち着かなくなったのか、美人がもじもじし始めた。

「あの……私、ご飯の続き作って来ますね?」

「あ、悪ぃね。お願いして良い?」

 美人は兄貴に微笑んで頷いて、いそいそと台所に戻って行った。

「……下宿人、って」

 その後ろ姿を見送って、なるべく小声でひそひそ話す。


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