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彼時々彼女、所によって一時ケダモノ。
第1章 彼時々彼女

「コテ、買い換えよっかな……さっき借りたの、すごくきれいに巻けたもん」

 ヒメの髪は、お菊さんの指導でくるんと綺麗に巻かれている。美容室帰りみたいだ。

「まず持ってる物で、さっき教えた通りにやってみて?道具よりも、使い方が大事だから」

「はーい」

「るりちゃんも巻いてみる?」

「うーん……傷みませんか?」

 私は、元々癖が有る。それをヘアアイロンで伸ばしたりしてるから、巻くと痛みそうな気がしちゃうんだけど。

「大丈夫!コツが有るんだよー」

 それで、私も教わってみたら。

「うん、可愛い!」

「るりっ、似合ーう!!」

「……うんっ……!」

 癖でうねっとするんじゃなくて、綺麗にくるんと巻かれた毛先。メイクは鏡を見るたび……だけど、髪はちらっと毛先を見るたび、気分が上がる……!!

「ありがとうございます!すごい嬉しい!」

「ありがとうございます、これで髪とお化粧の大学デビューは完璧だー!」

「こちらこそ、楽しかったー!!またやろうね、次は浴衣メイクとか!!」

「きゃー、楽しみー!」

「はいっ!」

「あ。これ、二人にプレゼント」

「え?」

 お菊さんはポーチの中をごそごそ探って、ヒメと私にサンプルを差し出した。

「今日使った口紅と、リップブラシ。ブラシ、すごくいい奴じゃないけど、そこそこ良いのだから。使って!」

「え、でも」

「良いから良いから!すぐ必要になると思うし……あ、そろそろライブ跳ねたと思うよ!」

 ……そう。
 今日は私達は休みだけど、お菊さんも、サクさんも、ヒカリさんも、仕事中なのだ。
 ライブの間お菊さんのご指導を受けて、終わったら楽屋に見せに行って一緒に帰る約束をしてる。

「本当に、ありがとうございました!」

「うーうん!またね、戸締まりには気を付けて!」

「……はい?」

 戸締まり?なんで?
 ……って思ってるうちに、お菊さんは子どもさんのお迎えが有るからって、帰って行った。お母さんだったんだ……!

「じゃあね、るり。明日化粧品買いに行こ!」

「うん。また連絡するね」

 私とヒメは、別々に帰る事になってたから。
 ライブ前に約束してた通りに、お互いの彼氏の楽屋に、こそこそ向かった。

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