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復讐の味は甘い果実に似て
第10章 それぞれの朝
 
 研究棟の庭の桜が満開に咲いているなか、僕の東京での生活は終わろうとしていた。
 修士課程の修了式が終わって、修了証書を受け取った僕が、この街でやるべきことはもうないように思われた。

 僕のしでかした馬鹿な復讐のために、迷惑をかけてしまった平河さんや天本さんに改めて謝り、恵梨との間に踏ん切りをつけさせてくれたお礼を言うべきか、とも思ったが、それもまた、余計なことのように思えた。
 もう、全てにケリはついたのだ。
 僕が天本さんを抱きしめて伝えた、ありがとう、という言葉で終わりにしたい。
 
 夕暮れのせいか、少しだけ感傷的になった僕に、そろそろ卒業祝いが始まるぞ、と同室の院生が声をかけてくれた。
 久しぶりに飲みたい気分だった。
 僕が絶望のなかで荒れているなか、何も言わないで見守ってくれた先生や、同じ研究室の仲間たちにお礼を言おう。

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