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復讐の味は甘い果実に似て
第4章 背徳のなかで ~明日香の告白~
先輩から復讐の会場について、わたしにメールがあったのは2月4日。
当日の昼過ぎのことだった。
先輩からのメールと一緒に送られてきたのは、リージェントホテルという高そうなホテルのセミスイートルームのリンク情報。
リンク先のホームページで見ると、1泊で15万はするみたいだ。
低用量ピルの時もそうだけど、先輩は正直、お金の使い方が無茶苦茶だ。
別に、わたしが気にすることではないけれども。
わたしは、期末テストの会場で恵梨を捕まえた。
そのまま恵梨をつれて電車に乗り、指定されたホテルに向かう。
浩二とは、2週間前にカフェの前で別れてから、連絡を取っていない。
期末テストの教室では何度も会っているけど、浩二からは何も話しかけてこなかった。
いまから男に抱かれてきます、と言われて、快く送り出す彼氏がどこの世界にいるんだ、という浩二の言葉を、わたしは幾度も思い返していた。
その通りだ。正論すぎて言葉もない。
仮に、わたしと浩二の立場が逆で、彼に同じことを言われたら、わたしは彼を2、3発、張り倒しているに違いない。
だけど、恵梨の嘘を見抜けず、集団で押しかけて先輩の傷をさらに抉ってしまったのは、外ならぬわたしなのだ。
わたしが恵梨にだまされなければ、こんなことにはなってない。
その責任は間違いなくわたしにある。
だが、もっとも大きいのは、わたしのプライドの問題だった。
あのカフェで先輩が言った言葉に、わたしはずっと囚われていた。
「君は、下らない義侠心を振りかざして人の傷を抉りまわすようなことをしたあげく、都合が悪くなれば、彼氏に泣きついて約束を一方的に反故にするのか……安い女だな。」
わたしは絶対に先輩の言う「安い女」にはなりたくない。
わたしは自分の始末は自分でつけたい。
それが、たとえ愛する人を裏切ることだとしても。