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復讐の味は甘い果実に似て
第6章 絶望へのいざない ~ひかるの告白~
 そうこうしているうちに、あたしに先んじて明日香の復讐の日が来た。
 だけど、翌々日にテストの教室で顔を合わせた明日香は、特に何かが変わった風もなく、いつもと同じだった。険悪になっていた彼氏ともうまく仲直りできたらしい。
 あたしには、まるでわけがわからなかった。

 あたしを勇気づけようと思ったのか、明日香は少しだけ教えてくれた。
「……あの先輩、結構いい人だよ。多分、ひかるが初めてってわかったら、優しくリードしてくれるんじゃないかな。わたしも高校の時に付き合ってた彼と、今の彼しか知らないから、そんなに経験人数多い方じゃないけど、多分、先輩って、アレ上手いと思うよ……わたしも……その、結構、いい感じだったし……。」

 いつも、はっきりとモノを言う明日香にしては、珍しくぼやかした言い方をしていたが、その内容はえらく肯定的だった。
 復讐の道具としての先輩との一夜は、明日香にとって悪いものではなかったのだろう。
 それとも、男の人に抱かれて肌を合わせれば、何のかんの言っていても、それなりにシンパシーを感じてしまう、ということなのだろうか。
 なんにしても、そのあたりのことは処女のあたしにはわからないことだった。

 だけど、あたしにも確実にわかることがある。
 先輩は未だに恵梨のことを吹っ切れていないのだ。
 明日香を復讐の贄にした後でも、まだ、先輩の怒りは、落ち着き先を見いだせていないのだろう。

 それは多分、今までの恵梨への愛情の裏返しだ。
 深かった愛情が、そのまま復讐の怒りに転化してしまっている。
 復讐の業火は、まだ、恵梨も、その周りのあたしや明日香も、そして、当の先輩自身をも焼き尽くすように激しく燃え盛っているのだ。
 
 全てを燃やし尽くした後で、先輩はいったい何を見るのだろうか。
 ……そして、復讐の贄として供されるあたし自身は。


 結局、あたしは、明日香の励ましなのか何なのかよくわからない予備情報だけを受けて、復讐の当日を迎えることになってしまった。
 すでに後期のテストは終わり、大学は春休みに入っていた。

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