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復讐の味は甘い果実に似て
第6章 絶望へのいざない ~ひかるの告白~
 だが、あたしの決意は、自分の口で言うほど盤石ではなかった。
 
 恵梨の前でめちゃくちゃエッチになってやる、とあたしがどれだけ意気込んだところで、悲しいことに、今のあたしはただの処女に過ぎない。
 テニスで言うなら、あたしがプロの世界ランカーに自分のサーブを見せて、なかなかのもんでしょ、と自慢するようなものではないのか。

 第一、あたしなんかが先輩とセックスするというだけで、恵梨はそんなに嫉妬するのか?
 痛々しさに同情されるだけではないのか?

 そういうことを考えだすと、気持ちが滅入る一方だった。
 明日香と産婦人科に行ったときも、明日香には納得しているような話をしたけれど、実際には、自分のなかできちんと意思が固まっているわけではなかった。 
 そう言わないと、自分の決心が揺らぎそうでしかたなかったのだ。

 もちろん、明日香に言ったように、先輩への同情というか、愛情というかよくわからない感情はある。
 だけど、そういう薄ぼんやりした感情は、まるで寿命の切れかけた蛍光灯のように、儚く消えたり灯ったりして、あたしの決心を少しも強固にはしてくれなかった。
 こんな非道な復讐計画など捨てて、逃げだしてしまいたくなる処女のあたしを、どうにか支えているのは、恵梨への復讐心だけだったのだ。
 
 そして、あたしが後期テストの日程を消化していくなかで、復讐の日は少しずつ近づいてきていた。
 あたしはどうしようもなく落ち着かない気持ちを、ひたすらテスト勉強に打ち込むことで紛らわせていた。まじめに勉強に打ち込んだわけではなく、逃げただけというのが自分でも情けない。
 もっとも、あとになって成績表を見ると、前期に比べて妙に成績の良い科目が多くなり、自分で苦笑いすることにはなったが。

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