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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第10章 奇跡の逆転ホームラン!
≪成果の上がらぬ日々≫
「は、お名刺頂だい致します」
その日、有田は冷や汗の連続だった。セールスに出たものの、上着のポケットに入っている筈の名刺入れと今期の目標カードが無くなっていた。
名刺は営業カバンに予備が入っていたから良かったものの、目標カードは紛失がバレたら、「バカ野郎、情報漏えいだ!」と榎本課長に怒鳴られるどころでは済まされない。管理本部には顛末書を出さなければいけない。それから、仲間から脅かされていたように、絶対に課長代理になれない。
自宅は勿論、セールスの合間に、たまり場の「喫茶 あけみ」や、立ち寄った覚えのある場所を何度も探したが、どこにも見当たらない。
こんな調子だから、1月も成果の上がらぬまま月末を迎えてしまった。
夕方には営業会議が予定され、榎本課長は朝からピリピリしている。
しかし、皮肉屋の副支店長は、仏頂面の支店長が電話を架けているのを聞きながら、こちらをちらちら見ているだけで、何も言ってこない。
あれはきっと人事部からの電話だ
いよいよ地方支店に飛ばされるのか
だけど、今更じたばたしても始まらない
覚悟が出来ている有田は「行ってきます!」と営業カバンを抱えて外に飛び出した。
「おい、有田、お前、転勤か?」
いつものように「喫茶 あけみ」には成績の上がらぬ営業マンたちがたむろしていた。
「は、お名刺頂だい致します」
その日、有田は冷や汗の連続だった。セールスに出たものの、上着のポケットに入っている筈の名刺入れと今期の目標カードが無くなっていた。
名刺は営業カバンに予備が入っていたから良かったものの、目標カードは紛失がバレたら、「バカ野郎、情報漏えいだ!」と榎本課長に怒鳴られるどころでは済まされない。管理本部には顛末書を出さなければいけない。それから、仲間から脅かされていたように、絶対に課長代理になれない。
自宅は勿論、セールスの合間に、たまり場の「喫茶 あけみ」や、立ち寄った覚えのある場所を何度も探したが、どこにも見当たらない。
こんな調子だから、1月も成果の上がらぬまま月末を迎えてしまった。
夕方には営業会議が予定され、榎本課長は朝からピリピリしている。
しかし、皮肉屋の副支店長は、仏頂面の支店長が電話を架けているのを聞きながら、こちらをちらちら見ているだけで、何も言ってこない。
あれはきっと人事部からの電話だ
いよいよ地方支店に飛ばされるのか
だけど、今更じたばたしても始まらない
覚悟が出来ている有田は「行ってきます!」と営業カバンを抱えて外に飛び出した。
「おい、有田、お前、転勤か?」
いつものように「喫茶 あけみ」には成績の上がらぬ営業マンたちがたむろしていた。