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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第10章 奇跡の逆転ホームラン!
≪えっ、それは私にも分かりません≫
「おいおい、有田、ちゃんと報告してくれないと困るよ」
店に戻ると、通用口で榎本課長が待っていた。
「あの、何のことでしょう?」
「惚けるな!」
いきなり小突かれ、そのまま支店長室に連れて行かれたが、怒っている様子でもない。
「君、いったいどうなっているんだ?」
いつもの有田なんぞに声も掛けない支店長までもが狐につままれたような顔をしている。
「はあ、何の案件でしょうか?」
「バカ野郎、支店長がお聞きになっているのは浅丘流の取引のことだ」
苛立つ榎本課長がせっついてくる。分っているくせに、そんなことを聞くなよ。
「あ、いや、まだご報告するようなことは何もありませんが」と不貞腐れて答えると、「お前、惚けるな!」と背中をバーンと叩きやがった。痛てな!と言いたくなったが、その時、「まあ、待ちなさい、榎本君」と、いつもはつるんで攻め立てる副支店長がにこやかな顔で「東西銀行との取引」と書かれた資料をテーブルに広げた。
「えっ、こ、これは…」
「今朝、浅丘流本部からうちの営業統括部に送られてきたメールだよ」
それは見れば分る。問題は資料の中身だ。
「先方からは当行と取引したいと言ってきているのに。有田君、君は事務長と会ったことが無いと言っている。メールの内容は君の目標とピッタリ一致する。これは、どういうことなのか、教えて欲しい」
副支店長が問い質す間も、支店長も榎本課長も有田から目を離さない。
「おいおい、有田、ちゃんと報告してくれないと困るよ」
店に戻ると、通用口で榎本課長が待っていた。
「あの、何のことでしょう?」
「惚けるな!」
いきなり小突かれ、そのまま支店長室に連れて行かれたが、怒っている様子でもない。
「君、いったいどうなっているんだ?」
いつもの有田なんぞに声も掛けない支店長までもが狐につままれたような顔をしている。
「はあ、何の案件でしょうか?」
「バカ野郎、支店長がお聞きになっているのは浅丘流の取引のことだ」
苛立つ榎本課長がせっついてくる。分っているくせに、そんなことを聞くなよ。
「あ、いや、まだご報告するようなことは何もありませんが」と不貞腐れて答えると、「お前、惚けるな!」と背中をバーンと叩きやがった。痛てな!と言いたくなったが、その時、「まあ、待ちなさい、榎本君」と、いつもはつるんで攻め立てる副支店長がにこやかな顔で「東西銀行との取引」と書かれた資料をテーブルに広げた。
「えっ、こ、これは…」
「今朝、浅丘流本部からうちの営業統括部に送られてきたメールだよ」
それは見れば分る。問題は資料の中身だ。
「先方からは当行と取引したいと言ってきているのに。有田君、君は事務長と会ったことが無いと言っている。メールの内容は君の目標とピッタリ一致する。これは、どういうことなのか、教えて欲しい」
副支店長が問い質す間も、支店長も榎本課長も有田から目を離さない。