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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第10章 奇跡の逆転ホームラン!
「これから長い付き合いになるから、よろしく」
「とんでもございません。こちらこそ、よろしくお願い致します」
電話を終えた有田が受話器に向かってお辞儀をしていると、傍らに榎本課長が立っていた。
「今の、お家元?」
「あ、そうですが」
「今度、君が浅丘流本部に出向するようだけど。実は、俺が銀行の担当者になるんだ」
「えっ、課長がですか…」
有田は参ったなと思った。だが、面白くないのは榎本課長の方だ。
部下だった有田がお客様、しかも最重要取引先のお家元付になる。
その課長が、驚くことに「まあ、今までのことは今までのこととして、水に流し、よろしく頼むよ」と、しおらしく握手を求めてきた。
見ていた有田の仲間たちはニヤニヤ笑っている。
まあ、いいでしょう、どうせあんたとは切れない仲らしい。
「いえいえ、こちらこそ。課長にはこれからも引き続きご指導をお願いします」
「おお、そう言ってくれるか。あははは、持つべきものはいい部下だな。おい、そうだろう、お前たち」
先程のしおらしさはどこえやら?榎本課長は有田の背中をバンバン叩きながら笑い飛ばしていた。
やはり課長になるには、これくらいの図々しさが必要か?有田の仲間たちは「敵わねえや」と呆れさを通り越し、感心していた。