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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第3章 エロ坊主、河口光道
小鹿は「おい」と空になったグラスを差し出した。

「あ、すみません。気が利きませんで」と有田が酒を注ぐと、小鹿は「あ、それでいい…」とグラスから溢れそうになるのを口を近づけた。

「そんな時だよ、河口と知り合ったのは。妙に浮世絵だとか春画だとか詳しくてな。年も近かったから、俺のところに来たり、あいつのところに泊まったり、いろいろ遊んだよ。でも、あいつは俺と違って頭がいい上に、よく勉強していた。期待され、厳しい修行も積んだ。僧侶としては立派だ。檀家からも信頼されている。だがな、理事長としては、あれはいかん」
「何かあるんですか?」
「ああ、大ありだ。毎年夏に、来年、付属中学に入りたいという子供の親たちを集めて説明会を行うんだが、これはと思う母親だけを本堂に呼び出すんだ」
「そんなことをすれば、セクハラだとばれるじゃないですか」

小鹿の盃に空になったが、今度は言われる前に酒を注いだ。

「だからお前は凡人なんだ。河口は理事長だぞ。狙いをつけた相手をじっくり調べあげ、絶対に大丈夫だという母親だけを誘い出すんだ。『理事長からお電話頂いたら合格!』って、そんな噂があるから、相手も了解しているって構図さ」

小説ではそんな場面が出てくることがあるが、実際に行われているとは信じられない。
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