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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第3章 エロ坊主、河口光道
≪ご本尊を前に≫

「小鹿ですが、ご住職いらっしゃいますか?」

石段を登り切ったところにある庫裏で来訪を告げると、「はい、ただいま本堂で来客中ですが」と返ってきた。

(あれだよ、あれ)
(え、あれですか)

小鹿と有田の間には言葉はいらない。ニヤッと笑った小鹿は「じゃあ、上がらせてもらうよ」と、「勝手知ったる我が家」とばかりに有田を連れ、本堂に繋がる渡り廊下に上がったが、慌てた職員が「小鹿さん、こ、困ります」と庫裏から飛び出したきた。

しかし、そんなことを聞く小鹿ではない。「ああ、分ってる、分ってる」と言いながら、その職員の言うことも聞かずに本堂に上がっていった。

すると、思っていた通り、

「あ、いや、やめて下さい、理事長先生…」
「知子さん、娘さんの入学を約束したんだから、そう堅いことを言わず…」
「いえ、それとこれとは……あ、ああ、いけません、いけません…」
「ほれほれ、そんなに体を捩ったら、服が破れてしまいますよ」
「あ、あ、ダメです…」

と、中から男女の生々しい会話が聞こえてきた。

「おい、裏だ」

二人は音を立てないように裏に回ると、くぐり戸を抜けて中に入った。

「見えるか?」
「あ、ちょっと待って下さい…」

仏像に隠れて覗きこむと、ご本尊の前で、つるつる頭の男が全裸の女性を組み敷いていた。

「いました、あそこです」と有田が指差すと、「そうか、やっぱり、今日は呼び出し日だ」と小鹿が呟いた。
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