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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第4章 ママ、お願い。お礼は体で払います
「ふふふ、こう見えても、昔、私は銀座のクラブにいたのよ」
「えっ、銀座…すげえなあ」
有田は銀座と聞いて、急に久美子が別世界の女のように見えてきた。
「『ユリ』ってクラブ。ナンバー1にはなれなかったけれど、その次くらいかな」
「へえ、そうかあ…」
「感心することでもないわよ」
「もしかして、そこで、小鹿さんと?」
「その辺は内緒」
有田もバスタブを出て、久美子からシャワーヘッドを受け取った。
「吉田さんの件は私が何とかしてあげる」
「大丈夫?」
「だから言ったでしょう、私は銀座の女だって」
「はあ…」
「銀座はね、やると言ったら、やるの」
「銀行より厳しんだ」
「ホステスは個人事業主、やり抜くしか生きていけないのよ」
「そうなのか…」
「まあ、とにかく、あの榎本さんをぎゃふんと言わせましょうよ。思い出したら、また、頭にきちゃった。何が課長よ。お店に来たって、いつも『領収書頂だい』だもん。自分のお金で飲め!って言ってやりたいわ」
有田は「それがサラリーマンだよ」と言いかけたが、やめた。それを言ったら、今度こそ言葉だけじゃすまない。シャワーヘッドで叩かれてしまう。
「そんなことより、ね、だっこしてよ、お姫様だっこ」
怒ったと思ったら甘えてくる。変わり身が早い。これも「銀座の女」か…それもいいでしょう。「お姫様だっこですか。お安い御用ですよ」と間髪入れずにえいっ!と抱き上げると、久美子は「きゃあー」と黄色い声を出した。
明日は仕事にならないなあ…ぼやいても仕方がない。全ては久美子にかかっている。
よし、今夜は寝ずに頑張るしかない。