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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第1章 スナックのママ
「え、な、何、それ?」
有田はビックリしたが、ママは「いいの、いいの」と笑うだけで、頼みもしないのにワインを取り出し、「私から」とグラスに注いでくれた。
「す、すみません」
「気にしないで。じゃあ、改めてカンパイ!」
「ご馳走になります」
グラスを合わせ、一口飲んだが、やはり美味い!有田は一気に飲み干してしまった。
「あらあら、無理しちゃだめよ」
「いやあ、こんな美味しいワインは飲んだことがないので」
気の利いたセリフではないが、ママは気に入ったようだ。
「ふふふ、お上手ね。ところで、明日はどうするの?」
「ゴルフって言いたいですけど、せっかくの土曜日、寝てます。ははは、つまらないでしょう」
「奥様は?」
「子供が産まれるので、先月から九州の実家に帰ってます」
「そう、予定日は?」
「来月です」
「ご不自由でしょう?」
「いえ、コンビニも、コインランドリーもあるから」
有田がそう言い掛けた時、ママはクスッと笑っていた。
「えっ、何か、ありましたか?」
「ふふふ、何でもありません…」
ママの妖しい微笑みに、有田ははっと気がついた。こんなことが分らぬ無粋な奴になってはいかん。