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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第5章 銀行との取引も、「男と女」も、決め手は「好き・嫌い」
≪まずは挿入≫

「ねえ、ちゃんと手伝ってよ」
「あ、ごめん」
「帯はそこに掛けて」

こんなところを九州の実家に里帰りしているワイフに見られたら……そんなことを考えるくらいなら、ここには来ていない。

しかし、着物は手が掛かる。帯締め、帯揚げ、帯、帯枕、帯板、腰ひも、伊達締め、襦袢、湯文字、和装ブラジャー、足袋・・きちんと整理しておかないと、次に着る時、困ってしまう。

ドレスは納戸、着物は三畳間。やはり、元「銀座の女」だ。

「ふぅー、お茶頂だい」

有田とは他人ではないから、脱いでも何か着る必要もない。素っ裸でソファーに座ってお茶を飲む。有田も風呂に入ろうと思っているからパンツ一枚になっていた。

「はい、熱いお茶」
「あら、気が利くわね」
「うん、小鹿さんに習ったから。『有田、女は体を冷やしたらダメだぞ。ちゃんと面倒を見るんだぞ』ってね」
「ふふふ、あの人はマメだから」

久美子がふぅーと一吹きしてお茶を美味しそうに飲む。素っ裸だから、喉元をお茶が通っていく様子がはっきりと分る。

「お風呂に入ろうかしら」
「あ、化粧は?」
「あら、有田ちゃんの奥様、お風呂に入る前にお化粧を落とすの?」
「あ、いや、帰ったら、もうパジャマだから、いつ化粧を落とすか知らないよ」
「ふふふ、そうなのね。じゃあ、教えてあげる。お肌は乾燥が大敵。お風呂前にお化粧を落とすと、乾燥しやすくなるのよ。だから、お風呂で温まってから顔を洗って汚れを落として、お風呂を出たら、ポンポンとクリームを塗るのよ」
「だから、女は長風呂なのか」
「そういうこと。じゃあ、入りましょう」

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