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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第6章 エロ芝居?それはないぜ

「では、ごゆっくり」

酒と食事の支度を終えた女将は仲居と一緒に下がっていった。

「まあ、一杯いこう」
「は、ありがとうございます」

日本酒をお猪口に満たし、有田は小鹿、久美子、それに芸者の雪乃と乾杯した。

「ああ、旨えなあ」
「いや、本当ですねえ」
「有田ちゃんもこれでしばらくは安泰ね」
「ええ、一息つけました」

空になったお猪口に久美子がお酌をしてくれる。

「ああ、旨い」
「ははは、こういう時の酒っていうのは格別だよなあ、有田」
「はい、格別です」
「そうか、そうか。次は俺にもそういう酒を飲ませてくれよ」
「ええ、いいですよ。僕にできることなら…」

ここまで言って有田ははっと気がついた。小鹿と久美子がニヤニヤしている。やっぱりおかしい。有田は手にしていたお猪口を座卓に置くと、「ちょっ、ちょっと待って下さいよ。また、変なことをするんじゃないでしょうね?」とずるずるっと後ろに下がった。

「ははは、逃げるな有田。ちょいと、つまらねえ芝居をしてもらいたいだけだよ」
「そうよ、ほんと、簡単なことだから」

ごまかそうとしたって、分る。二人が簡単なことを求める筈がない。またもスワッピングなのか?それならば久美子がニヤニヤすることはない。「芝居」と言ったので、何かを演じるのか?いづれにしてもまともなことではない。

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