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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第6章 エロ芝居?それはないぜ
≪俄か特訓≫
それから3週間、有田は全ての誘いを断り、毎日、小鹿の家に通った。
「ほら、腰が浮いています」
「あ、いけない。痛っ…」
日本舞踊は重心を下に置くのが基本だが、有田は競技ダンスの動きが抜けず、どうしても重心を上に取ってしまう。雪乃は、顔は優しいが、こういう時は容赦なく細い竹の棒で腰を打ちつけてくる。
「ははは、まるでSMショーだな」
小鹿は笑い転げるが、彼は粋な男、踊りの心得がある。「こう踊るんだ」と簡単にやって見せる。
「小鹿さんが踊ればいいじゃないですか」
お尻がミミズ脹れになった有田が泣き言をいうと、「バカ野郎。俺のケツなんか誰が見るんだ?お前の様なピチピチのケツじゃないとダメなんだよ」と、これまた旨いことをいう。バカだと思っても、「そうですか、きれいですか」と有田はすっかり乗せられてしまった。
そんなこともありながら、3週間経った10月下旬にはどうにか様になってきた。
「いいねえ、有田、やるじゃないか」とご機嫌の小鹿から、「これが脚本だ」とホッチキス留めしただけのものを渡された。
「えっ、これだけ?」
有田が驚くのは無理もない。演目は「常磐津 年増」をエロチックに仕上げ、最後は主人公の女を若い男を手籠めにするという、舞踊関係者が聞いたら怒るような内容だ。
「踊りは雪乃だから心配するな。有田、お前は後ろで教わった通りに真似事をすればいい。それで途中で鼓でポンと合いの手が入るから、そこで襲うんだ」
「襲うって、どうすればいいのか…」
「世話のやける野郎だな。今夜、泊まっていけばいいんだよ。バカ!」
小鹿はその場にあったプラスチックの定規でボコボコに殴った。だが、こういう時の小鹿は機嫌が悪いのではない。口で説明するのが面倒くさい時である。
それから3週間、有田は全ての誘いを断り、毎日、小鹿の家に通った。
「ほら、腰が浮いています」
「あ、いけない。痛っ…」
日本舞踊は重心を下に置くのが基本だが、有田は競技ダンスの動きが抜けず、どうしても重心を上に取ってしまう。雪乃は、顔は優しいが、こういう時は容赦なく細い竹の棒で腰を打ちつけてくる。
「ははは、まるでSMショーだな」
小鹿は笑い転げるが、彼は粋な男、踊りの心得がある。「こう踊るんだ」と簡単にやって見せる。
「小鹿さんが踊ればいいじゃないですか」
お尻がミミズ脹れになった有田が泣き言をいうと、「バカ野郎。俺のケツなんか誰が見るんだ?お前の様なピチピチのケツじゃないとダメなんだよ」と、これまた旨いことをいう。バカだと思っても、「そうですか、きれいですか」と有田はすっかり乗せられてしまった。
そんなこともありながら、3週間経った10月下旬にはどうにか様になってきた。
「いいねえ、有田、やるじゃないか」とご機嫌の小鹿から、「これが脚本だ」とホッチキス留めしただけのものを渡された。
「えっ、これだけ?」
有田が驚くのは無理もない。演目は「常磐津 年増」をエロチックに仕上げ、最後は主人公の女を若い男を手籠めにするという、舞踊関係者が聞いたら怒るような内容だ。
「踊りは雪乃だから心配するな。有田、お前は後ろで教わった通りに真似事をすればいい。それで途中で鼓でポンと合いの手が入るから、そこで襲うんだ」
「襲うって、どうすればいいのか…」
「世話のやける野郎だな。今夜、泊まっていけばいいんだよ。バカ!」
小鹿はその場にあったプラスチックの定規でボコボコに殴った。だが、こういう時の小鹿は機嫌が悪いのではない。口で説明するのが面倒くさい時である。