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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第9章 難攻不落の浅丘流本部
指でくいっと持ち上げたメガネが光っている。
「あ、いや、す、すみません…」
有田は慌ててしまったが、すかさず縄秀が助け舟を出してくれた。
「ははは、さすが天下の美男子、浅丘正巳ですな。彼も色男ですが、見とれたようですね」
「ほぉ、色男ねえ…あ、あれか、あの天狗男?」
「やはり覚えてましたか。そうですよ、彼こそ、あの天狗男ですよ」
「あははは、ああ、すげえ色男だ。あははは」
二人の高笑いに場が一変に和んだ。
「そうか、ご一同ですな。おお、失礼しました、小鹿さん」
「いやあ、浅丘さんに顔を覚えて頂けるなんて、光栄ですな」
「何をご謙遜。あの世界で、小鹿さんを知らないのはもぐりですぞ」
持ち上げられた小鹿はご機嫌。次いで久美子。
「あなたは…確か、白山のスナック『笑み』の美人ママ、そうだ、久美子さんって言ったかな?」
「あら、いやだあ、美人ママだなんて。一度しかいらしてないのに、覚えて頂いていらっしゃるの、ふふふ、ありがとうございます」
元、銀座の女もご満悦。そして、風間さん。
「直子ちゃん、薬、持ってきてくれた?」
「はい、先生、ここに」
「おお、ありがとう」
微笑み、左手で薬袋を受け取りながらも、右手はお尻をさっと撫でる。
「あ、いや、エッチ!」と風間さんは浅丘正巳の背中を叩くが、彼は悪びれもせず、「ははは、直子ちゃんは可愛いなあ」とハグしている。
ありゃりゃ、これは相当なプレイボーイだ…有田は感心していたが、これはホンの序の口だ。