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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第9章 難攻不落の浅丘流本部
≪大荒れの営業会議≫

「有田!どうなってんだよ?」
「辞表はまだですか?」

12月末の営業会議は、いつもの通り、有田に対する榎本課長の罵声と副支店長の皮肉で始まった。

「あと3ケ月、まだ取引のきっかけも掴めないとはどういうことだ?」
「はい、毎週通っているんですけど、事務長に会えなくて」
「毎週でダメなら、毎日通うんだ。そのくらいの熱意が無くて、この目標が達成できると思っているのか!」

毎度の榎本課長の吊るし上げに有田は辟易していた。

一緒に訪問して下さいってお願いしても、あんたは「あれはお前の課題だろう?」と逃げまくっていたくせに…と文句の一つも言いたくなる。

「有田君、『知恵のある奴は知恵を出せ。知恵の無い奴は汗をかけ』って言葉を聞いたことがありますか?」
「あ、いえ、ありませんが」
「あなたは知恵があると思っていらっしゃるのですか?」

副支店長、皮肉ばかり言いやがって。今に見ていろ…有田はじっと唇を噛みしめていた。
 
  会えたと言えば、『支店長とのアポを取れ』と言うに決まってる…
  だけど、そんなことしたって、『すみません、スケジュールが一杯で』
  と門前払いをされるだけだ。もっと親密になるまでは、何を言われても我慢、我慢…

「有田、何をぶつくさ言っているんだ。そんな暇があったら、もっとしっかりセールスしてこい!」
「はあ」
「この野郎、舐めやがって、味噌汁で顔を洗って出直して来い!」
「あの、味噌汁で顔を洗ったら火傷しますけど」
「バカ野郎!」

ブチ切れた榎本課長は手に持っていたノートを投げつけてきたが、開き直った有田はそれを右手で受け止めると、「お返しします」と投げ返した。
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