この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第9章 難攻不落の浅丘流本部
≪初詣の誘い≫
「明けましておめでとう」
「あなた、おめでとうございます」
有田家は静かなお正月を迎えていた。
昨年の夏、妻が実家で出産し、孫の顔はたっぷり見せてあるので、このお正月は帰省することなく、自宅でゆっくり過ごせる。
「景気厳しい折りですが、目標達成に向け、頑張ろう!」
「今年こそ昇格!」
こんな銀行関係の年賀状に混じり、
「今年も楽しもうぜ 小鹿大樹」
「飲みにいらっしゃい スナック 久美子」
「踊りは覚えてね 雪乃」
「診察はいつでも可 但し、下痢はお断り 金沢秀夫」
「けん玉遊び、いつでも歓迎 風間直子」
「出家するかい? エロ坊主、河口光道」
という彼らからの〝危ない〟賀状に、クスクス笑っていると、スマホがプルプル、プルプルと鳴った。
「はい、有田ですが?」
「おお、おめでとう。エロ坊主だ」
「あ、いや、河口さん、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
電話の相手は健勝寺の住職、河口光道だ。
「何をしている?」
「はい、子供と遊んでいます」
「家庭サービスか、それはいいことた。ところで、初詣はどうした?」
「いや、まだ子供が小さいので」
「ははは、なら、ちょうどいい。明日、俺の寺に来いよ。いい年になるように祈ってやるから」
「はあ、でも…」
「まあ、来てみろよ。新年会の支度もしてあるから。じゃあ、待っているぞ」
いつものことだが、電話は一方的に切れてしまった。
「明けましておめでとう」
「あなた、おめでとうございます」
有田家は静かなお正月を迎えていた。
昨年の夏、妻が実家で出産し、孫の顔はたっぷり見せてあるので、このお正月は帰省することなく、自宅でゆっくり過ごせる。
「景気厳しい折りですが、目標達成に向け、頑張ろう!」
「今年こそ昇格!」
こんな銀行関係の年賀状に混じり、
「今年も楽しもうぜ 小鹿大樹」
「飲みにいらっしゃい スナック 久美子」
「踊りは覚えてね 雪乃」
「診察はいつでも可 但し、下痢はお断り 金沢秀夫」
「けん玉遊び、いつでも歓迎 風間直子」
「出家するかい? エロ坊主、河口光道」
という彼らからの〝危ない〟賀状に、クスクス笑っていると、スマホがプルプル、プルプルと鳴った。
「はい、有田ですが?」
「おお、おめでとう。エロ坊主だ」
「あ、いや、河口さん、おめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
電話の相手は健勝寺の住職、河口光道だ。
「何をしている?」
「はい、子供と遊んでいます」
「家庭サービスか、それはいいことた。ところで、初詣はどうした?」
「いや、まだ子供が小さいので」
「ははは、なら、ちょうどいい。明日、俺の寺に来いよ。いい年になるように祈ってやるから」
「はあ、でも…」
「まあ、来てみろよ。新年会の支度もしてあるから。じゃあ、待っているぞ」
いつものことだが、電話は一方的に切れてしまった。