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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第9章 難攻不落の浅丘流本部
≪初詣かどうか、怪しいものよ≫

「あなた、本当に初詣なの?」
「あ、当たり前じゃないか」

昨晩、妻と姫始めを済ませたが、一緒にお風呂に入ったのがまずかった。

「何よ、そのオチンチン!」
「あ、いや、な、何でもない」

セックスの最中は、妻も夢うつつで気がつかなかったか、事が終われば、頭ははっきりする。陰毛を剃り落としていたことを見咎められてしまった。

「そんなことをして何でもないってことはないでしょう?私がお産の間、いったい何をしていたのよ!」
「バ、バカなことを言うなよ。お、俺は仕事で大変だったんだぞ…」

まともに返事ができる訳がない。「なら、どうして、こんなところを剃るのよ?」と追及厳しく、「いや、そ、それは、せ、清潔にするために決まっているだろう…」としどろもどろになってしまった。

「ウソおっしゃい!明日の初詣だって怪しい」と言われ、もう何を言っても信じてもらえない。ついに、「私も初詣に行くわよ!」となってしまった。

「ほら、ここだよ」
「健勝寺っていうの?」
「ああ、名刹だ」

初春の暖かな日差しを背中に受け、有田は生後4ケ月の赤ちゃん、幸一朗を抱き、妻と一緒に石段を登り始めた。

   悩みごと、仏さまがお聞きします
   仏さまの前は気持ちが安らぐ場所です

「珍しい看板ね」
「ああ、あれ?住職が『花ユリ学園』の理事長だから、教育的な言葉が好きなんだよ」
「あの『花ユリ学園』の?」
「知っているのか?」
「知っているわ、有名じゃない。へえ、あの学校を経営しているお寺なんだ」

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