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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第10章 奇跡の逆転ホームラン!
≪たまり場「喫茶あけみ」≫
年が改まって1月。東西銀行の業務は「新たな気持ちで、全力投球して下さい」と面白くもない無味乾燥な支店長を訓示で始まった。
「おい、このままで生きていけると思うなよ」
いきなり脅しをかけてきた榎本課長の顔色は悪い。正月も休めなかったようだ。こういう時は、店にいない方がいい。有田は「行ってきます!」とカバンを抱えて外に飛び出してみたものの、正月早々、セールスに励んだところで、成果は知れたもの。
「おい、課長の機嫌、スッゴク悪いな」
営業マンのたまり場「喫茶あけみ」には正月ボケした男たちがたむろしていた。
「全くだ。店の中の空気が悪くなるので有田、どうにかしろよ」
「そんなこと言われたって」
「お前、このままじゃ、課長代理にもなれないぞ」
「脅かさないで下さいよ」
「いや、マジにヤバいぞ」
仲間に弄られ、ますます憂鬱になったところに、プルプルとスマホが鳴った。
「おい、課長だったら、誰もいないって言ってくれ。コーヒー代、出してやるから」
「俺ひとり置いてかないで下さいよ!」
「悪いな、お先に!」
仲間たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまったが、電話は榎本課長ではなく、看護師の風間さんからだった。
「有田さん?」
「はい、そうです」
「明日、浅丘先生にお薬を届けるんだけど、一緒に行かない? 」
「えっ、浅丘さんのところ?」
「そうよ、どうかしら?」
「勿論、連れて行って下さいよ。なんとかしなくちゃいけないんだから」
藁をも掴む思いの有田はスマホに向かって頭を下げていた。
年が改まって1月。東西銀行の業務は「新たな気持ちで、全力投球して下さい」と面白くもない無味乾燥な支店長を訓示で始まった。
「おい、このままで生きていけると思うなよ」
いきなり脅しをかけてきた榎本課長の顔色は悪い。正月も休めなかったようだ。こういう時は、店にいない方がいい。有田は「行ってきます!」とカバンを抱えて外に飛び出してみたものの、正月早々、セールスに励んだところで、成果は知れたもの。
「おい、課長の機嫌、スッゴク悪いな」
営業マンのたまり場「喫茶あけみ」には正月ボケした男たちがたむろしていた。
「全くだ。店の中の空気が悪くなるので有田、どうにかしろよ」
「そんなこと言われたって」
「お前、このままじゃ、課長代理にもなれないぞ」
「脅かさないで下さいよ」
「いや、マジにヤバいぞ」
仲間に弄られ、ますます憂鬱になったところに、プルプルとスマホが鳴った。
「おい、課長だったら、誰もいないって言ってくれ。コーヒー代、出してやるから」
「俺ひとり置いてかないで下さいよ!」
「悪いな、お先に!」
仲間たちは蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまったが、電話は榎本課長ではなく、看護師の風間さんからだった。
「有田さん?」
「はい、そうです」
「明日、浅丘先生にお薬を届けるんだけど、一緒に行かない? 」
「えっ、浅丘さんのところ?」
「そうよ、どうかしら?」
「勿論、連れて行って下さいよ。なんとかしなくちゃいけないんだから」
藁をも掴む思いの有田はスマホに向かって頭を下げていた。