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銀行員 有田雄一、私は「女」で出世します
第10章 奇跡の逆転ホームラン!
だが、「ねえ、今回は金沢先生もいないのよ」という彼女の返事を聞いて、有田の顔は曇った。
金沢先生こと縄秀は「私に任せなさい」と言っていた。勝手に出掛けて行って、失敗したら、取り返しがつかない。だが、風間さんはそんなことお構いなしに誘ってくる。
「それ、まずくないですか?」と有田は渋い返事をしたが、なぜか風間さんは明るい。
「どうしていけないの?」
「だって…」
分かったことを聞くなよと有田はイラついたが、「私と二人きりじゃイヤ?」と甘い言葉が返ってきた。
そうか、そういうことか。正月ボケした頭がいっぺんに生き返った。
「そう、そうですね…じゃあ、行きましょうか」
「そうよ、そうこなくちゃ。じゃあ、明日、午前10時、金沢小児科の前で待っているから」
縄秀抜きで行っても、仕事の話をしなければ約束違反にはならない。それより、帰りに風間さんと「けん玉遊び」ができる。憂鬱な気分はすっ飛んだ。
「さあ、頑張りますか」
気合いを入れ直した有田は「喫茶あけみ」を飛び出していった。