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第35章 僅かな期待

「言いたいことは言えた？ 」

「……はい。本当にすみません」

たかが上司と部下の関係でここまで言ってどうするんだと冷静になる。

「じゃあさ、今度は俺の番ね」

課長が少し開いてた距離を詰めて耳元で言うから反射的にビクっとしてしまった。
鼓動は速いし、顔も熱い！！

「彩華も安岡と仲良すぎだよね？ 告白されたのはどうしたの？ 」

私の手の上に重なるように手を乗せて、少しだけ力を込める。

「……私、好きな人いるので、断りました」

声が震える……。
反応が怖い。
今すぐ逃げ出したい気持ちになる。

「彩華がお酒弱いのとか知らなかったし、安岡のが彩華のことを知ってるんだって思ったら、悔しくなった」

何でそんなこと言うのーー？
それじゃ勘違いしちゃうよ。
課長に想われてるって都合の良い考えが浮かぶ。

「俺、かなり嫉妬深いみたい。独占欲も強いし」

そう言う課長は指を絡める恋人同士のような繋ぎ方に変える。
ドキドキと僅かな期待が止まらない。

「……私は、彼女『役』ですよね？ そんなこと言われると……」

「じゃ『役』辞める？ 」

課長が耳元で囁くように言った。