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⊥の世界
第10章 家族計画
「愛してる。」
「わ、私も、、、」
「いってらっしゃい。」
「いってらっしゃいのキスは?」
「おかえりなさい。」
「また、ソファーで寝てしまって、、
食事はしたの?」
「あなたを待ってたから、、」
「遅くなるから先に食べてなさいって言ったのに。」
「でも1人で食べるの寂しいから。」
「嬉しいけどさ、もっと自分を大事にしなさい。」
そんな些細な会話が無くなっていったのは、いつからだろう。
それと共に、夜の回数も減っていって、
今のようになってしまった原因はなんだったのだろうか。
特に喧嘩したわけでもない。
互いに浮気したとかもない。
私が思うに、夫が私の体調を気遣い、少しずつ離れていったという印象だった。
「あのさ、使ってない部屋があるだろう。」
夫が言いづらそうに口火を切る。
「ええ。」
我が家には、子供部屋にしようと、引っ越してから使ってない部屋があった。
しばらくはその部屋を子供部屋と呼んでいたが、なかなか授からないうちに呼び名に戸惑うようになっていった。
夫は、その部屋をとうとう『使ってない部屋』と表現した。
「そこをさ、どちらかの寝室にして寝室を別にしたらどうかと思うんだけど。
僕がそっちに移ってもいいし、君が新しい部屋を使いたければそれでもいい。」
「な、何で寝室を別にするの?」
「僕の帰りが遅いからさ、寝て待っていてと言っても、必ず僕がベットに入る時、君、起きてしまうだろう?」
「大丈夫よ、寝不足になったら、お昼寝だって出来るんだし。」
「いや、あのさ、逆に僕は、朝、もっとギリギリまで寝ていたいんだよね。」
確かに、朝の支度に私は1時間ほど早く起きる。夫は食事が出来てから起きてくるけど、ベットから私が出る時に眠りが浅くなってしまう。
夫は優しい人。本当は自分の為に寝室を別にしたいのだろうけど、私の為にと言ってくれた。
でも、その優しさが私の重荷となり、傷つける時もあるのだ。
「そうね、でも、それって家庭内別居ってこと?」
この時、つまり今から3年前くらいは、回数はかなり減ったとはいえ、まだ、夜の生活があった。互いの睡眠の為に、少ない接触も何もかも無くしてしまうのだろうか。