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⊥の世界
第10章 家族計画
「じゃあさ、君が新しい部屋を使えばいい。君に合ったサイズのベットを買って、例えば趣味のものとか、君の好きなものを部屋に置いて、寝室を別にするというより、新しい部屋を君の部屋にするのさ。
勿論、ここは夫婦の寝室のままだから、君はここで寝ててもいいし、自分の部屋で寝てもいい。別に別居したいって訳じゃないんだよ。」
夫の睡眠のことを考えたら、その申し出を断ることはできなかった。
寝室を別にした当初は、週末の土曜や夫の帰りが早い時は寝室で一緒に寝る時もあった。
だからといって、その時、必ず夜の生活があるわけでもない。それよりも朝、浅い眠りの中、無意識につく夫のため息の方が気になって、段々、元寝室で一緒に寝ることは無くなっていった。
一年、二年、いや、ほぼ三年に近いくらい夜の生活はない。
それと共に、ちょっとした会話すら減っていったのだ。
一緒にいるのに会話しないのは辛い、会話がないと、週末せっかく一緒にいても話題が見つからない。居たたまれなくなるから、週末も自室にいたり、家事が忙しいふりをして、益々会話が減っていった。
今は、「いってくるね。」「ああ、いってらっしゃい。」
後は食事の挨拶と食事に纏わる話題と、週末の「おやすみなさい。」
週末の「おやすみなさい」はどちらかが自室で用事があれば、そのまま無いときもある。
そして、元寝室は夫の部屋、私の部屋と、完全に家庭内別居になったのだ。
⊥の世界と一緒ね。
ふと思い自嘲する。
いいえ、↓の世界の方が優遇されている。
だって、⊥の家には、私の家はあっても、私の部屋はない。
↓の世界にはリビング以外に私の部屋があるのだから。
決定的に家庭内別居となったのは3年前、でも、徐々に、段々と会話が減り、夜の生活が減った原因はなんだったのだろう。
やはり、あの事が原因なのだろうか。
本当のところは、夫に聞いたことがないから、たぶん一生わからないのだけど、
私なりに、たぶんあの事が原因なのだろうと思っている。