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⊥の世界
第11章 だから今夜も
そして画面下の住人の数が4になり、入室中の枠にあったEさんの名前が消え、Eさんの部屋が『空室』に変わる。
そして、『入居者募集』のアイコンが表示された。
画面遷移に気を取られているうちに、住人の会話は続けられていた。
Eさんへのお別れのメッセージや突然の行動への感想。
「でも、転居後に本当に退会したかは、誰にもわからないからな。」
「じゃあ、ただの引っ越しで、他所に行ったっていうの?」
とAさんとRさんの書き込みにSさんが『わからないことを詮索するな』とたしなめたところで止まっていた。
「M子ちゃ~ん、大丈夫?」
Tさんから心配されている。
『大丈夫です。部屋の名前や募集ボタンが出て、画面遷移に驚いてしまって。』
「そっか、俺らにはわからないけど、家主さんの画面は色々あるからね。」
「どうするの?新しい住人募集するの?」
『ちょっと、急で何も考えてませんが、しばらくこのままになると思います。』
「そっかぁ、落ち着いてから募集でもいいかもね。」
「M子ちゃん、優しいから、落ち込まないでよ?」
「でも、皆が抜けたら、僕、M子ちゃんを独り占めできる~。」
「あほだな、A氏、俺は絶対引っ越さないよ。」
「俺も。M子あまり気にするな。E氏は黙っていなくなったんじゃないし、ちゃんと理由も話してくれたんだから。」
『はい、皆さんありがとうございます。』
そう書き込んだものの、どんな話題を提供すべきか思い浮かばず、昼間Sさんに言われていたにも関わらず、やはり動揺していた。
住人たちも、私への応援メッセージを書き込んでくれるけど、他の話題にはならなかった。
『すみません、夫が帰ってきちゃったので、急ですが、おやすみなさい。』
「おやすみなさい。」
「Mちゃんおやすみ。」
「M子ちゃん、夫ってぇ~。僕でしょ?」
書き込みが増える前に急いで退室ボタンをクリックした。