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⊥の世界
第2章 ⊥の世界とは
家主である私が入室ボタンをクリックすると、住人に通知が入る。
時間のある住人が入室してくるのが表示されて、会話が始まる。
「M子ちゃん、こんにちは。」
『こんにちは。』
「M子ちゃんはOLさん?」
「なんでそう思うんだよ。」
「ランチタイムと夜が多いから。」
「暇な主婦だって日中入るだろ?」
「それはそうとM子ちゃん、昨日は早々に退室しちゃうし。」
『すみません。』
「ここは会話する場所なんだからさ。何でもかんでもノーコメントされたら、成り立たないわけよ。」
「別に少し作り話が入るくらい構わないんだからさ。どんどん話してくれなきゃ。」
『ごめんなさい、皆さんはここ長いんですか?』
「俺はサイトが立ち上がってすぐだから、もう3年になるな。」
「僕は3ヶ月。M子ちゃんは?」
『1週間、でも、それは皆さんご存知でしょう?』
「いや、サクラとかさ、複アカ持ってて渡るとかあるから。」
『本当に始めて1週間です。
家主は、他の家には入れないし、勝手がわからずすみません。』
そう、ここでは女性が家を作り家主になる。家の間取りも女性が決められる。最大5LDK、つまり5人の客を迎えることができる。
客に部屋を与え、個別に会話をすることも出来るが、私は慣れていないのでシェアハウスにして、共用スペース、LDKの部分で皆さんと同時に会話している。
つまり私の家の住人になった人達全てが会話を見て、会話に入ることが出来る。
女性は家主にしかなれないので、他の家には入ることが出来ない。
だから、他の人がどうやって家を管理しているのか、どんな会話をしてるのかわからないのだ。
「まあね、M子ちゃんは本当に慣れてない感じわかるから、サクラや渡りじゃないって信じてるよ。」
「だけどさ、会話したくて家主になったんだろ?なのに、ノーコメント連発、そして退室なんて繰り返してたら、空き家になっちまうよ。」
そう、男性は運営に家賃を払って入居する。家が気に入らなければ、引っ越しできる。
空き家になっても家主にペナルティーはないけど、人気も出ないまま空き家になれば、ずっと入居者は入らず会話できないのだ。