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レディー・マスケティアーズ
第10章 ポルトス&ダルタニァン ――パークサイド・パレス
「うっ、うるさい。この女が自分から絞めてくれとせがむから……。だから、こうなったんだ」
バリバリと音を立てて、また雷鳴がとどろいた。停電のほうも、一向に修復する気配がない。
ヒューヒューという風の音。カーテンが揺れて、テーブルの上にあった紙か何かが舞い上がった。
「あわわっ」
田野倉が震えながら、そちらを指差す。
「馬鹿野郎! 窓の隙間から風が吹き込んだだけじゃねえか。驚かすな!」
木庭茂が、田野倉を怒鳴りつける。見ると、あれほど仲の悪い田野倉と浩一が抱き合って震えている。
ガシャン。
何かが倒れる音がした。人の気配がする。自分たち三人とは違う人間の気配が……。
「わたしを忘れた?」
背中から女の声がした。か細い、消え入るような声。
「わたしよ。わたしを忘れたの」
浩一が、次に田野倉が、最後に茂が振り返った。青白い光の中に、その輪郭が浮かび上がる。透けるように白い肌をした女だ。
白いガウン姿でそこに立っている。まるで雨の中を歩いてきたかのように、乱れた髪も白いガウンもぐっしょりと濡れていた。
「ひぇーっ!」
三人が、一斉に悲鳴を上げる。
「おっ、おまえ……」
浩一が、震える指をその女に向けた。
間違いない。あいつだ。あの女が、何でここに。だって、あいつはもう死んだはずだ。
「そうよ。わたしの名前は桜井美里。あなたたちに弄ばれて、この十階の窓から飛び降りた桜井美里」
「ぎゃあ! 化けて出たんだ!」
男たち三人は、どうにかここから逃げ出そうと、足をばたつかせる。しかし、前にも後ろにも、一歩たりと進めなかった。
バリバリと音を立てて、また雷鳴がとどろいた。停電のほうも、一向に修復する気配がない。
ヒューヒューという風の音。カーテンが揺れて、テーブルの上にあった紙か何かが舞い上がった。
「あわわっ」
田野倉が震えながら、そちらを指差す。
「馬鹿野郎! 窓の隙間から風が吹き込んだだけじゃねえか。驚かすな!」
木庭茂が、田野倉を怒鳴りつける。見ると、あれほど仲の悪い田野倉と浩一が抱き合って震えている。
ガシャン。
何かが倒れる音がした。人の気配がする。自分たち三人とは違う人間の気配が……。
「わたしを忘れた?」
背中から女の声がした。か細い、消え入るような声。
「わたしよ。わたしを忘れたの」
浩一が、次に田野倉が、最後に茂が振り返った。青白い光の中に、その輪郭が浮かび上がる。透けるように白い肌をした女だ。
白いガウン姿でそこに立っている。まるで雨の中を歩いてきたかのように、乱れた髪も白いガウンもぐっしょりと濡れていた。
「ひぇーっ!」
三人が、一斉に悲鳴を上げる。
「おっ、おまえ……」
浩一が、震える指をその女に向けた。
間違いない。あいつだ。あの女が、何でここに。だって、あいつはもう死んだはずだ。
「そうよ。わたしの名前は桜井美里。あなたたちに弄ばれて、この十階の窓から飛び降りた桜井美里」
「ぎゃあ! 化けて出たんだ!」
男たち三人は、どうにかここから逃げ出そうと、足をばたつかせる。しかし、前にも後ろにも、一歩たりと進めなかった。