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レディー・マスケティアーズ
第12章 ミッション終了 ――横浜 ホテルのスィートルーム
今回のミッションに関係する以外の情報は、吉岡を通して彼の昔の仲間に回した。しかし、警察が踏み込んだ時には屋敷にはもぬけの殻で、木庭敦子の姿もハルクの姿もなかった。
もっとも、一連の事件が白日の下に晒された今となっては、誰も木庭敦子に近づきはしないだろう。敦子の商品価値は地に落ちたのだ。
「それで問題の裏帳簿だが、いったい何が『裏』だったんだ? 木庭茂は、会社の金を着服していなかったのか? そのことについては、マスコミはもちろん、警察や公取委も何も騒いでいないようだが」
松永とアトスに、吉岡が尋ねた。
「そうよね。あの日の木庭敦子も、あんたらが裏帳簿を見つけたところで、どこが『裏』だか見抜けるはずがないと言っていたじゃない?」
いつかアラミスたちも、話の輪に加わっていた。
「確かにね。トーホー開発の経理部で保管されている『表』の帳簿と、木庭が屋敷の金庫に隠し持っていた『裏』の帳簿とを突き合わせてみたけれど、金額を示す数字は同じだった。いったいどこが『裏』なのか、わたしにもすぐにはわからなかった」
アトスが言った。
「じゃあ、二つとも同じものだったの?」
ポルトスの問いに、アトスが首を振る。
「いいえ、違いはあった。違ったのは別の数字よ」
「別の数字?」
アラミスとポルトス、それにダルタニァンまでが声を上げた。
「違ったのは社員番号。トーホー開発では社長から新入社員まで、経理にお金を申請・精算するたびに該当者の社員番号が登録される。つまり、木庭茂が申請したまま精算していない使途不明金が、木庭でなく、社長の久保寺春樹の社員番号に書き換えられていたの」
もっとも、一連の事件が白日の下に晒された今となっては、誰も木庭敦子に近づきはしないだろう。敦子の商品価値は地に落ちたのだ。
「それで問題の裏帳簿だが、いったい何が『裏』だったんだ? 木庭茂は、会社の金を着服していなかったのか? そのことについては、マスコミはもちろん、警察や公取委も何も騒いでいないようだが」
松永とアトスに、吉岡が尋ねた。
「そうよね。あの日の木庭敦子も、あんたらが裏帳簿を見つけたところで、どこが『裏』だか見抜けるはずがないと言っていたじゃない?」
いつかアラミスたちも、話の輪に加わっていた。
「確かにね。トーホー開発の経理部で保管されている『表』の帳簿と、木庭が屋敷の金庫に隠し持っていた『裏』の帳簿とを突き合わせてみたけれど、金額を示す数字は同じだった。いったいどこが『裏』なのか、わたしにもすぐにはわからなかった」
アトスが言った。
「じゃあ、二つとも同じものだったの?」
ポルトスの問いに、アトスが首を振る。
「いいえ、違いはあった。違ったのは別の数字よ」
「別の数字?」
アラミスとポルトス、それにダルタニァンまでが声を上げた。
「違ったのは社員番号。トーホー開発では社長から新入社員まで、経理にお金を申請・精算するたびに該当者の社員番号が登録される。つまり、木庭茂が申請したまま精算していない使途不明金が、木庭でなく、社長の久保寺春樹の社員番号に書き換えられていたの」