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レディー・マスケティアーズ
第12章 ミッション終了 ――横浜 ホテルのスィートルーム
全部足してもわずかな金額だったが、社長の久保寺が使い込みをしているかのように偽装して、彼を社長から追い落とすための策略だったのだ。社長自らの使途不明金。警察や公取委が問題にするような額でなくても、トーホー開発というコップの中では大きな嵐になる。
「あの裏帳簿は、背任行為で久保寺春樹を社長の座から追い落とし、木庭茂が後釜に座るためのジョーカーだった。指揮したのは、もちろん木庭敦子。目的は会社の乗っ取りね」
アトスの言葉に、全員がほおっと感嘆の声を漏らした。
「すごいじゃない、アトス。よくそんなことまで……」
アラミスの言葉に、アトスが小さく首を振った。
「いいえ。ヒントをくれたのは隊長よ」
「隊長?」
全員の目が、今度は松永に向けられる。
「いや、それほどのこともしていないがね」
照れたような笑いを浮かべて、松永が顎をこすった。よれよれのネクタイこそしていたものの、今日も毛玉だらけのカーディガン姿だった。
「今回のミッション、最初から何かが引っかかっていた。覚えていないか? 最初のミーティングの時に、この中の誰かが言ったことを」
「誰かが?」
松永が続けた。
「うん。成城の木庭の屋敷がスクリーンに映し出された時だ。『木庭茂ってやつ、こんな立派な邸宅で暮らせるご身分なのに、どうしてケチな使い込みなんてやろうと思ったのかな』と、誰かがそう言っていなかったか」
「あの裏帳簿は、背任行為で久保寺春樹を社長の座から追い落とし、木庭茂が後釜に座るためのジョーカーだった。指揮したのは、もちろん木庭敦子。目的は会社の乗っ取りね」
アトスの言葉に、全員がほおっと感嘆の声を漏らした。
「すごいじゃない、アトス。よくそんなことまで……」
アラミスの言葉に、アトスが小さく首を振った。
「いいえ。ヒントをくれたのは隊長よ」
「隊長?」
全員の目が、今度は松永に向けられる。
「いや、それほどのこともしていないがね」
照れたような笑いを浮かべて、松永が顎をこすった。よれよれのネクタイこそしていたものの、今日も毛玉だらけのカーディガン姿だった。
「今回のミッション、最初から何かが引っかかっていた。覚えていないか? 最初のミーティングの時に、この中の誰かが言ったことを」
「誰かが?」
松永が続けた。
「うん。成城の木庭の屋敷がスクリーンに映し出された時だ。『木庭茂ってやつ、こんな立派な邸宅で暮らせるご身分なのに、どうしてケチな使い込みなんてやろうと思ったのかな』と、誰かがそう言っていなかったか」