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第5章 作戦開始　――恵比寿　海綿清掃のフロア

「創設者は初代社長の塚越謙一郎。元は精密機械会社の技術職だったが、トーホー開発を起業。今の規模まで会社を押し上げた。二〇一二年に病死。その後、二〇一四年までの二年間は未亡人の塚越涼子が副社長を務め、古くから塚越に仕えていた久保寺春樹が社長となった。業績は大きな上昇カーブこそないものの、優良企業の範疇に入るものだ」
　吉岡は、いったん言葉を切った。
「しかし、今年の六月、さっきの写真にあった桜井美里という女子社員が転落死を遂げた。死亡事故はこの一件だけだが、聞き込みを入れると、妙な匂いがしてくる。この三年ほどで退社する女子社員が続出しているんだ。みんな、入社一年経つか経たないかのうちで、どれも特命企画部という部署に配属された人間に限られている」
「依頼人の話とも合致するということだな」
松永の言葉に、全員が大きく頷いた。
「これを見てほしい」
　吉岡の合図に、坂上がキーボードを叩くと、スクリーンの画面には、別の建物が映し出された。十階建ての高層マンションだ。
「これって……」
「そう。桜井美里が転落死した江東区住吉五丁目のマンション、パークサイド・パレスだ。トーホー開発が社員寮代わりに数部屋を所有しているとのことだが、利用する社員はほとんどいない。今年も、新入社員の桜井美里だけで、後は空き部屋だ」
「なるほど」