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レディー・マスケティアーズ
第6章 ポルトス ――トーホー開発 特命企画部
「おい! いつまで待たせるんだよ! おれたちを舐めていやがるのか!」
「そうだ。女を出せ! あの女を出すんだよ!」
野太い男の声が、フロアに響く。
男は二人だ。
どちらも表参道のビル街ではけっして見かけることのない、派手なスーツにエナメルの靴というけばけばしい格好だった。確かめなくても、どんな種類の輩か見当がつく。
「このアマ、隠し立てする気なら、ただじゃあおかねえからな!」
「このアマ」と呼び捨てられたのは、トーホー開発の受付嬢二人で、「申し訳ありません。申し訳ありません」と頭を下げたまま、恐怖のあまり、ぼろぼろ涙を流していた。傍らに立つ男性社員も、ただ揉み手をする以外何もできず、体を固くするだけだ。
「何とか、何とか、今日はお帰りいただけませんか。わたくしどもの社は何も……」
「何を言ってやがる! この会社に山岸沙也子という女がいることは、もう調べがついているんだよ!」
二人組の片割れ、若いほうの針金のようにやせ細った男が、剃った眉をぴくぴくさせた。
「おい! 隠し立てしても始まらないぞ! おれたちは毎日でも顔を出すからな!」
「そうだ! 山岸沙也子を連れてこない限り、毎日だ!」
今度は、年長のゲジゲジ眉毛の大男だ。
こんなやり取りは、もう三十分以上も続いており、一階フロアのソファに腰掛けていた来客たちは、何も聞こえないふりをして体を縮めていた。
「そうだ。女を出せ! あの女を出すんだよ!」
野太い男の声が、フロアに響く。
男は二人だ。
どちらも表参道のビル街ではけっして見かけることのない、派手なスーツにエナメルの靴というけばけばしい格好だった。確かめなくても、どんな種類の輩か見当がつく。
「このアマ、隠し立てする気なら、ただじゃあおかねえからな!」
「このアマ」と呼び捨てられたのは、トーホー開発の受付嬢二人で、「申し訳ありません。申し訳ありません」と頭を下げたまま、恐怖のあまり、ぼろぼろ涙を流していた。傍らに立つ男性社員も、ただ揉み手をする以外何もできず、体を固くするだけだ。
「何とか、何とか、今日はお帰りいただけませんか。わたくしどもの社は何も……」
「何を言ってやがる! この会社に山岸沙也子という女がいることは、もう調べがついているんだよ!」
二人組の片割れ、若いほうの針金のようにやせ細った男が、剃った眉をぴくぴくさせた。
「おい! 隠し立てしても始まらないぞ! おれたちは毎日でも顔を出すからな!」
「そうだ! 山岸沙也子を連れてこない限り、毎日だ!」
今度は、年長のゲジゲジ眉毛の大男だ。
こんなやり取りは、もう三十分以上も続いており、一階フロアのソファに腰掛けていた来客たちは、何も聞こえないふりをして体を縮めていた。