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レディー・マスケティアーズ
第8章 アトス ――トーホー開発 経理部
「驚かせてごめんなさい。忘れ物をしてしまったみたいなんです」
そう言うと、千尋は自分のデスクの引き出しを開けて、何かを探り始めた。
藤川は額に汗を浮かべながら、座り姿勢のままパンツとズボンを引き上げた。千尋のいる場所からなら事務机の陰になって、剥き出しの下半身を見られないで済んだかもしれない。
「あったわ。よかった。部屋の鍵を会社に忘れるなんて、本当に恥ずかしい」
館山千尋がにっこりと笑顔を向けた。
「それより課長。毎晩、こんなに遅くまで仕事をされているんですか。たいへんですね」千尋の視線の先にある時計は、八時を指していた。
「まあね。これが経理マンの宿命だ」
千尋の口から出た「たいへんですね」の一言に、藤川は伸びた鼻の下をこすりながら答えた。
「ちょうどよかった。わたし、前から課長にご相談したいことがあったんです」
「わたしにかい?」
「ええ。仕事中は周りに大勢おられるから、なかなか声もかけづらくて。忘れ物のおかげで、ちょうどいいチャンスになったわ。今でよかったら、お話を聞いていただけますか」
「なるほど。まあ、館山さんの相談なら断るわけにもいかんな」
無事にズボンを履き終えた藤川は、胸を反らせるようにして言った。
「できるなら、ここではなくて、もっと小さな部屋でお話できませんか。ほかに誰もいない、二人だけになれる場所で……」
「なら、同じ二階にミーティング・ルームという部屋がある。そこなら二人きりになれる」
藤川は声を上ずらせながら、さっきまで自分の一物をしごいていた課長席を立った。千尋も肩を寄せるようにして、それに従った。
そう言うと、千尋は自分のデスクの引き出しを開けて、何かを探り始めた。
藤川は額に汗を浮かべながら、座り姿勢のままパンツとズボンを引き上げた。千尋のいる場所からなら事務机の陰になって、剥き出しの下半身を見られないで済んだかもしれない。
「あったわ。よかった。部屋の鍵を会社に忘れるなんて、本当に恥ずかしい」
館山千尋がにっこりと笑顔を向けた。
「それより課長。毎晩、こんなに遅くまで仕事をされているんですか。たいへんですね」千尋の視線の先にある時計は、八時を指していた。
「まあね。これが経理マンの宿命だ」
千尋の口から出た「たいへんですね」の一言に、藤川は伸びた鼻の下をこすりながら答えた。
「ちょうどよかった。わたし、前から課長にご相談したいことがあったんです」
「わたしにかい?」
「ええ。仕事中は周りに大勢おられるから、なかなか声もかけづらくて。忘れ物のおかげで、ちょうどいいチャンスになったわ。今でよかったら、お話を聞いていただけますか」
「なるほど。まあ、館山さんの相談なら断るわけにもいかんな」
無事にズボンを履き終えた藤川は、胸を反らせるようにして言った。
「できるなら、ここではなくて、もっと小さな部屋でお話できませんか。ほかに誰もいない、二人だけになれる場所で……」
「なら、同じ二階にミーティング・ルームという部屋がある。そこなら二人きりになれる」
藤川は声を上ずらせながら、さっきまで自分の一物をしごいていた課長席を立った。千尋も肩を寄せるようにして、それに従った。