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レディー・マスケティアーズ
第8章 アトス ――トーホー開発 経理部
ミーティング・ルームは、小さな円テーブルと椅子が四脚あるだけの殺風景な部屋だった。周囲を見回すと、額縁の絵も花瓶もない。
ちょうどいいわ。余計なものがないほうが集中できる。わたしも相手も……。
「それで、どんな相談だい?」
正面に座った藤川の貧相な顔が、いつもより赤らんでいる。
それには答えず、千尋は羽織っていたジャケットを隣の椅子にかけた。
そして、ブラウスの胸元に手をかけ、黙ってボタンを外し始めた。黒のブラウスがはだけ、ベージュ色のブラが半分以上あらわになる。
「おっ、おい、君。館山君」
藤川が椅子からずり落ちそうにして、手をばたばたと振る。千尋はブラウスの胸に手を入れ、首からかけたプチダイヤのネックレスを藤川の目の前で揺らした。ゆらゆら、ゆらゆらと……。
「これを見て。じっと。じっと見るのよ」
言われた通りにする藤川が、しきりに目をしばたいた。何かを反射しているのか、プチダイヤは時折小さな光を放つ。千尋が、パチンと指を鳴らした。
「あの、君。君、これは……」
藤川がさらに何か言おうとしたが、舌はもつれ、呂律が回らない。言葉だけでなく、目はとろんとして、宙をさまよっていた。
「そう。気持ちを楽にして。何も怖くないのよ。気持ちを楽に」
プチダイヤのネックレスを左右に揺らしながら、千尋がささやく。相手は、もうその誘いに抗うこともできなくなっていた。
「いらっしゃい。子猫ちゃん」
千尋が小さく手招きした。
ちょうどいいわ。余計なものがないほうが集中できる。わたしも相手も……。
「それで、どんな相談だい?」
正面に座った藤川の貧相な顔が、いつもより赤らんでいる。
それには答えず、千尋は羽織っていたジャケットを隣の椅子にかけた。
そして、ブラウスの胸元に手をかけ、黙ってボタンを外し始めた。黒のブラウスがはだけ、ベージュ色のブラが半分以上あらわになる。
「おっ、おい、君。館山君」
藤川が椅子からずり落ちそうにして、手をばたばたと振る。千尋はブラウスの胸に手を入れ、首からかけたプチダイヤのネックレスを藤川の目の前で揺らした。ゆらゆら、ゆらゆらと……。
「これを見て。じっと。じっと見るのよ」
言われた通りにする藤川が、しきりに目をしばたいた。何かを反射しているのか、プチダイヤは時折小さな光を放つ。千尋が、パチンと指を鳴らした。
「あの、君。君、これは……」
藤川がさらに何か言おうとしたが、舌はもつれ、呂律が回らない。言葉だけでなく、目はとろんとして、宙をさまよっていた。
「そう。気持ちを楽にして。何も怖くないのよ。気持ちを楽に」
プチダイヤのネックレスを左右に揺らしながら、千尋がささやく。相手は、もうその誘いに抗うこともできなくなっていた。
「いらっしゃい。子猫ちゃん」
千尋が小さく手招きした。