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レディー・マスケティアーズ
第3章 依頼 ――二か月後
「だから、パパの、いいえ、松永さんの言いつけ通り、ちゃんと任務は果たしたわ。久保寺にはネクタイを、木庭茂と浩一にはライターを、タバコを吸わない田野倉にはキーホルダーを。どれもヨーロッパ旅行のお土産だと話した。人事部長の大泉の分が足りなくなってしまったから、ハンカチでごまかしたわ。成田どころか渋谷のデパートで買ったものだけど」
涼子は、何か大きな冒険を成し遂げた少女のように口元を緩めた。
「女探偵になったみたいで、何だか興奮しちゃった。まるでヴィク・ウォーショースキーの気分よ」
松永はちびた鉛筆の先を舐めながら、「ネクタイ」「ライター」「キーホルダー」とノートに書き込む。「女探偵」と「ウォーショースキー」の文字は飛ばしていた。
「それで、紳士四人の様子はどうでした」
「どうって、昔通りよ。仰々しくお礼を言われて。田野倉なんて、その場で鍵束を新しいキーホルダーに移し替えていた。だけど油断ならないのも昔通り。人事部長の大泉も嫌なやつだけど、木庭たちと部長の田野倉は、顔を見るだけで虫唾が走るわ」
「素晴らしい。さすがに前社長夫人からの贈り物では、無碍にはできませんからな。それと……」
松永は、そこで言葉を切った。
「人事部長のほうは? こちらの申し出を受けてくれそうなんですね」
「大泉? 契約社員を入れる件なら大丈夫よ。前にも言ったように、特命企画部は、ここ数年、退職する女子社員があとを絶たない状況でね。わたしが無理押ししなくても、新しい人に来てほしくて仕方ないはずよ」
「この何年か、女子社員の退職が続くのは、この間伺ったような理由というわけですね」
「ええ。木庭茂の声がかりで田野倉が部長になり、木庭浩一が配属されてから。だからこそ、あなたに仕事をお願いに来たのよ」
涼子は、何か大きな冒険を成し遂げた少女のように口元を緩めた。
「女探偵になったみたいで、何だか興奮しちゃった。まるでヴィク・ウォーショースキーの気分よ」
松永はちびた鉛筆の先を舐めながら、「ネクタイ」「ライター」「キーホルダー」とノートに書き込む。「女探偵」と「ウォーショースキー」の文字は飛ばしていた。
「それで、紳士四人の様子はどうでした」
「どうって、昔通りよ。仰々しくお礼を言われて。田野倉なんて、その場で鍵束を新しいキーホルダーに移し替えていた。だけど油断ならないのも昔通り。人事部長の大泉も嫌なやつだけど、木庭たちと部長の田野倉は、顔を見るだけで虫唾が走るわ」
「素晴らしい。さすがに前社長夫人からの贈り物では、無碍にはできませんからな。それと……」
松永は、そこで言葉を切った。
「人事部長のほうは? こちらの申し出を受けてくれそうなんですね」
「大泉? 契約社員を入れる件なら大丈夫よ。前にも言ったように、特命企画部は、ここ数年、退職する女子社員があとを絶たない状況でね。わたしが無理押ししなくても、新しい人に来てほしくて仕方ないはずよ」
「この何年か、女子社員の退職が続くのは、この間伺ったような理由というわけですね」
「ええ。木庭茂の声がかりで田野倉が部長になり、木庭浩一が配属されてから。だからこそ、あなたに仕事をお願いに来たのよ」